4月14日 フレンドリーデー
『世界中のみんなを幸せにしたい』
保育園の卒園文集を見て、私は静かに涙を流した。今が早朝で良かった。まだ誰も起きていない。
子供の卒園から入学、更には私の仕事の繁忙期も、相まって文集など、卒園式に渡されたものを見ることがなかなか出来ないでいた。今日、ようやっと文集にたどり着いた。
願い事を1つ書いてくださいと言う設問に対し、冒頭の一文が娘の答えである。
親ばかだけれど、なんて素晴らしい娘だろう。そう思わずにはいられない。
「今日は学校行きたくない」
6時半、娘が起床し着替えをしつつ、そんなことを言った。
「どうしたの?何か嫌なことがあった?」
昨日の彼女の言動を思い出しながら聞いてみる。どうだったと聞けば、楽しかったと答えていたのだが、ついこの間小学1年生になったばかりだ。疲れてしまったのかもしれない。
「お友達がケンカするの」
「沙耶と?」
「ううん。私とじゃなくて、知らないお友達」
聞くと、彼女の言うお友達とはクラスも学年も違う、言ってしまえば知らない子である。それが校庭なのか体育館なのか、はたまた通学路なのか、どこかでその『お友達』がケンカしているのを見かけたのだと言う。
「仲直りしてねって、言えなかった」
「それは仕方ないよ。沙耶が知らないお友達だちでしょう?」
文集に書いていた彼女の願いは本気なのかも知れないと、ちらと思う。
「沙耶はどうしたかったの?」
「ケンカしているお友達を仲直りさせたかった」
「知らないお友達でも?」
コクリと頷くその顔はやっぱり元気がないのだ。私は急ぎ手帳を取り出した。今日の今日で終わらせなくてはならない仕事はなかったはずだ。確認し、スマホを開く。始業前の連絡はメール連絡と決められているので、その通り、メールを打った。
「急で申し訳ございませんが、娘のために本日お休みをいただきます」
念の為の引き継ぎ事項を並べて送信する。 「よし、今日はお休みしよう!」
「いいの?」
心配そうな顔をして私を覗き込む。私はそれに微笑んで返す。
「うん、大丈夫。ちょっと街に出て観察してみよう」
再びコクリと頷く。ほんの少し笑っているように思う。私は僅かに安心し、続けて伝えることにした。
「沙耶はどこにいるどんな人も幸せでいて欲しいんだよね」
「うん。お友達もそうじゃない人も」
「正直に言うね。それはちょびっと難しいと、ママは思う」
一瞬、再び顔が下を向く。
「だって、この世界には76億人くらいいるんだよ。ママやパパが沙耶と一緒に世界を笑顔にしようとしてもなかなか手が回らない」
私はそっと彼女の肩に触れた。
「でもね、76億人いる中で、1人ずつ笑顔にすることは出来るかもしれない」
下を向いていた顔が、ぐん、と前を向く。
「だから、今日は2人でたくさん遊ぼう。まずママは沙耶を笑顔にしたい」
「じゃあ、さやはママを幸せにしてあげる!!」
もう充分幸せだと思いながらも、私はありがとうと言って彼女を抱きしめた。
世界の人全てに手を回すのは難しい。でもそのうちの身近な1人には確実に手が回る。そうして皆が皆、1番近い人を笑顔にすることが出来れば、きっとそれは76億人にも届くはず。
私は娘の願いを叶えるために、まず彼女を抱きしめる。
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【今日の記念日】
4月14日 フレンドリーデー
新学期、新入学、新社会人など、新しくスタートを切る4月。その2週間後のこの日を友人との絆を深め、新たな友人づくりの日にと、株式会社スーパープランニングが制定。日付には4と14で「友達ってよいヨ(414)ネ!」の意味もある。また、同社ではその名称から地球上のすべての人々も、自然も、動物も「みんなが仲良くする日」として活動を行っている。オリジナルキャラクターの「MR.FRIENDLY」も人気。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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