7月4日 シーザーサラダの日
和風かゴマか、はたまた中華にしか選択肢のなかった僕に、新しい道を教えてくれたのは、ほかでもない君だった。
シーザーサラダ。
「別に今時普通だからさ、おしゃれでも何でもないと思うよ」
冬木りさはいつものように冷静な声と表情で僕に言った。
僕らはゼミの課題をやっている。
長丁場になりそうだと言う理由から、僕の家を作業場として提案した。その選択と提案に後悔もなにもないけれど、現在は少し緊張が付加されている。夜7時、おなかがすいたねと会話が広がり、何を食べるかと話しているとふいに彼女が聞いてきたのだ。
「ファミレスとか行って、まずは何を頼む?」
その質問、いるだろうかと思いつつ、課題にも飽きていた僕は割に真剣に答えていた。
「最初にサラダ、メイン、サイドメニューにミニチキンかな」
「おお、ほぼ同じだね。私はデザートも最初に頼んじゃうな。あ、ちなみにサラダは何頼むの」
「中身は何でも良いけどドレッシングは和風か中華だね」
僕がそう答えると、わずかに驚くような彼女の反応があった。
「みんなシーザーサラダを頼むのだと思っていた」
何という固定観念の固まりだろう。そう思わずにいられなかったけれど、そう思う僕の方こそ固定観念を持っているのかもしれないと思い、話をそのまま聞いていた。
「私はだいたいシーザーになっちゃうな。和風も中華もほぼ一緒に思ってしまうし、ゴマはなんか・・・・・・実家を思い出す」
「へぇ、実家ではゴマドレッシングだったんだね。うちもそうだよ」
だからおそらくその反動で和風か中華のドレッシングを頼むことが多いのかと自分で言っていて初めて気づいた。それに、と僕は付け加える。
「シーザードレッシングって、おしゃれな人たちがパーティーとかで頼むものだとイメージついちゃっていて」
僕がそう言って、彼女の返答が冒頭のそれだったのだ。
「そんな大層なものでもないし、何だったら私作るよ」
「え、いいの?ありがとう」
何とも軽口でお願いしてしまったわけだが、すぐに気づいた。
初めて身内以外の女性の手料理を食べることになる。
感動なのか、緊張なのか分からないまま僕は受け入れた。
かくして、冬木りさが僕の家の冷蔵庫の中を確認中である。
「おお、結構揃っているじゃないですか。ついでに簡単なパスタも作っちゃえばもう夕飯これでいいね」
そう言って、冷蔵庫からいくつかの材料を出していく。概ね揃っているらしいけれど、ドレッシングだけ買いにいこうと二人で外に出た。
「ごめん、どうせ外に出るなら外食にした方が冬木さんに負担ないよね」
そのつもりなく外に出てしまったことに申し訳なく思ってそう言うと、彼女はいたずらに笑って見せた。
「外食だとこれきりになりそうだけど、ドレッシングを買ってしまえば、また今度それを使いに来るという口実が出来るので問題なしです」
淡々と妙な作戦を告白され、僕はわずかに動揺した。
ああ、これできっと僕の中の印象は決定的。
和風も中華もさしおいて、きっとこれからはシーザーを頼む僕だろう。
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【今日の記念日】
7月4日 シーザーサラダの日
マヨネーズソースやドレッシングなどさまざまな食品を製造販売するキユーピー株式会社が、シーザーサラダの消費拡大を目的に制定。日付は1924年7月4日にメキシコのティファナのホテル「シーザーズプレイス」で、シーザーカルディニ氏がロメインレタスをメインにパルメザンチーズやクルトンなどの材料をかき集めて即興で作ったサラダが評判となり、これが「シーザーサラダ」の起源と言われることから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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