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11月21日フライドチキンの日

「香奈、最近気に入ってよく行くサロンがあるんだけどさ、土曜日みんなで行かない?」

 同僚の沙織が言う。サロンてなんだ。

 彼女のこの、行かない?が、行くよね!の意味だと気づくのに2年ほどかかった。子供のフリをしたまま気づかなくても良かったのかもしれない。

「もちろん!絶対行く」

 この世に絶対なんてないと、私が入社したときに父が言っていたことをいつも思い出す。けれどこの世には、『絶対』を絶対守るということもあるのだと知る。

 いろんな事に気づかない子供でいることも、この世にない絶対を絶対とするべく生きる大人になることも、どちらもしんどいなと思う。


 東京の中心、高層ビルで働く丸の内OL、高いヒールに体のラインが強調される細身のスーツ。外を見れば早くもイルミネーションがきらきらと輝いていた。イルミネーションは、電源をつければ輝くけれど、つけなければ輝かない。私と一緒。つけたところで輝いているのか分からないけれど。

「今日はランチどこ行く?」

 気づけば土曜日に行くサロンの話は終わっていたようだ。同僚の洋子がスマホを取り出して検索する。スマホを操るその指の先は早くもクリスマスをイメージさせるネイルである。

「あ、ここいいじゃん。この間雑誌に取り上げられていたヘルシーランチのお店」

「あ、知ってる!私も行きたかったの」

 ああ、とかいいね、とか同調する私。大体、ヘルシーランチってなんだ。健康的ってことかな。イメージするのは大体葉っぱの山盛りなのだが、間違っていないよね。もしそうならば、そんなの昨日も食べたじゃない。山盛り野菜にキヌアとかいう粒々が掛かっていて、お気持ち程度の薄いローストビーフが3枚ほど横たわるように盛りつけられていた。肉であるローストビーフがそんな薄っぺらで倒れそうなくらいなのだ(完全に私のイメージだけれど)。それを私たちが食べたところで元気になるとはとても思えない。

「ね、香奈はどうするの。行かない?」

 この場にいる同僚の4人、それぞれ皆悪いひとなわけでは決してない。多分、私を除く4人は居心地がいいのだろう。だから、ただただ私が合わないだけ。

 だってランチはおなかいっぱいむしゃむしゃ食べたい!

 そう思うと同時に近くを歩いているひとが取り出した携帯電話から局が流れた。スマホではない、携帯電話。

♪♪む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪♪

 突然だった。久々に聞く着信音に加えて、聞こえてきた歌は、もう懐かしすぎる歌。

 ぷあんと香る、熱々のフライドチキン。がぶりとかぶりつけばもう、口の中はその肉汁で満たされる。わんぱくな、子供さながら無我夢中で食べて、気づけばお腹がいっぱいになっているあの店のフライドチキン。想像するだけで香り漂う。

 私はヨダレが垂れるのをなんとかこらえて答える。

「ごめん、今日はチキンをかぶりつきたいからパスで!」

 そう言って、皆に背を向けた。

 彼女たちがどんな顔をしているかなど分からない。

 いつも勇気のないチキンな私だけど、たまにはカラッと揚げたフライドチキンになっても良いと思う。

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【今日の記念日】
11月21日 フライドチキンの日

フライドチキンチェーン店「ケンタッキーフライドチキン」などを運営する日本KFCホールディングス株式会社が制定。1970年11月21日、ケンタッキーフライドチキン(KFC)の日本第1号店が愛知県名古屋市西区にオープン。当時の日本には「フライドチキン」という言葉も食べ方も馴染みがなかったが、KFCの店舗が増えるにつれて広く知られるようになる。その後、KFCの行ったクリスマスキャンペーンを契機に、フライドチキンがクリスマスのごちそうとして定着した。日付は1号店がオープンした日から。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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