見出し画像

6月28日 「エアーかおる」の日

 つい買ってしまったのは、その名に「かおる」と言う私の名前が付いていたことと、夫に空気のようだと言われたからなのだと思う。

 『エアーかおる』て、私のことやないかい。

 これが第一印象だった。


 今朝のことである。

「そろそろ結婚10周年だね、どこか行く?何かする?」

 夫の孝成と結婚してまもなく10年である。結婚する際にお互いの意見をすりあわせ、子供を授かることはせず、2人で私たちのペースでのんびり過ごしてきた10年。

 これが幸せと言うのだろうと思っている。

「そうだなぁ、いつも通りで充分だよ」

 私は驚いて聞き返したが、やはり同じ答えだった。

 別に何もしなくて良い、と言うことだ。10周年だから、とか何もないのだろうか。私はなんだか少し悲しくなり、つい聞いてしまった。

「・・・・・・ねぇ、あなたにとって私ってどんな存在?」

 お互い、出勤前の忙しい朝に、唐突に聞いた私も悪いけれど、夫の答えに私は再び驚愕したのだった。

「そうだなぁ、空気みたいな存在だよ。じゃあ、行ってくるね」

 そう言うと快活に歩き出し、彼は駅に向かった。

 空気かよ。いてもいなくても良いような存在ということだろうか。そう思いながら私も彼に遅れて出社する。

 そう言う自分は、夫のことをそばにいなくてはならない存在だと思っているから、夫にとってはそうでない私なのだと知って、ただ悲しい。


 そんなことを一日中考えながら仕事をしていた帰り道に出会ったのが『エアーかおる』さんだ。そのふんわりとした感触が心地よく、そのままレジに向かったのだった。少し、お風呂に入るのが楽しみに思いつつ帰宅した。

 でもなぁ、と思う。お風呂には入ればすっきりするものの、その後のドライヤーで髪の毛を乾かす時間となると、やっかいなのだ。ゴーッと風を当てているその時間、私はとかく考え事をしやすいのである。堂々巡りになること請け合いだ。

 と、思いきや、驚いた。

「めっちゃ乾いている・・・・・・」

 買ってきたタオルで早速髪の毛を拭いたところ、水分がぐんぐん吸収されていくのが分かった。おかげでドライヤーを使う時間が急激に短くなり、つまりは終わらない考え事をする時間はほとんどない。

 まるで魔法である。

「ただいま」

 そしてふっと魔法が解ける。

「かおる、結婚記念日の前日、金曜日って仕事休める?」

「え、うん、まぁ予定なかったと思うから大丈夫かな」

「良かった。じゃあ空けておいて。10年の記念に連れて行きたい場所があるんだ」

 記念日のこと、考えてくれたようだった。何もしなくて良いと言っていたのに。私はどこか安心し、喜びが芽生えるのを感じる。

「ねぇ、今朝言っていた、私のこと空気みたいな存在ってどういう意味?



 私が言うと、彼は何を聞いているのかというような表情で答えてくれた。

「え、そんなの、なくては生きていけないって意味だよ。空気って一番大事でしょ」

 それ意外にあるの?といわれはしないものの、そんな雰囲気で答えてくれた。

 なんだ、答えは同じだったんじゃないの。

 安心から、私はうっかり涙を流してしまったが、その水滴はエアーかおるさんが瞬時に吸い取ってくれた。

 魔法は意外と身近にあるのかもしれない。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 

【今日の記念日】

6月28日 「エアーかおる」の日

岐阜県安八郡安八町に本社を置き、撚糸製造やタオルの販売などを手がける浅野撚糸株式会社が制定。吸水性、速乾性、耐久性に優れた撚糸である「スーパーZERO」を織り込んで作られた唯一無二のタオル「エアーかおる」の魅力をさらに多くの人に知ってもらい、使い心地を楽しんでもらうのが目的。日付は「エアーかおる」が発売された2007年6月28日から。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?