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5月15日 ヨーグルトの日

「全員ヨーグルト食べているらしいのよ!」

 趣味の教室から帰って早々、母が興奮した様子で言う。ぼーっとテレビを見ていた私はその勢いにおされ、うんと頷くので精一杯だ。

「やっぱり元気の秘訣ってあるのよね」

 母もまた、うんうんと自分で納得するようにした頷いた。

「えっと、全員とは?」

 なんとか絞り出して質問をすると『え、まさか知らないの!?』と言うような妙な表情で母が答える。

「川島さんと、壱岐さんと、倉田さんよ」

 母の『全員』の少なさにあきれつつ、私は飲むヨーグルトを飲んでいた。


「ああ、うちのママも同じテンションで帰ってきたよ」

 部屋に戻り、親友の君佳に電話をした。同じマンションに住む彼女の一家と私の一家はそれぞれ家族ぐるみでのつきあいである。私が幼稚園の時に同じクラスの彼女、川島君佳と仲良くなり、保護者同士も・・・・・・と言う流れでそのままつきあいを続けている。

 マンションの集会所で月に2度、ハワイアンキルトの教室が開かれており、私と君佳の母たちはそれに参加しているのだ。先に出た川島さんと言うのが君佳の母で、残る壱岐さんと倉田さんも同じマンションの住人で、その教室のメンバーだそうだ。

「元気の秘訣がヨーグルトだって発見したみたいに喜んで帰ってきたよ」

 君佳が笑う。その声は母のことをかわいらしいと思っているような柔らかな声色だった。

「前回はなんだっけ。糀が良い、だっけ」

「そうそう、その前は酒粕ね」

 母たちの健康談義を思い出しながら私たちは話す。


 母たちは健康を祈っている。もちろん父もそうだし、私だって長生きしたい。でもその中でも母は健康になることを求めているように思う。

「なんでだろうね」

 私がぽつりと言うと、ねぇ、と彼女も同調した。

「今が幸せで、この状態を続けていきたいと思っているから長生きしたいのかな」

「そうだね、確かにママたちいつも楽しそうだしね」

 その楽しそうにしているお互いの母たちを思い出しながら言う。

「結構悩みも多いのにね、人生って」

 なんてことを15歳の私たちが言う。

「ああ、でもママたちは一緒にいるときが楽しいのかな。悩みやなんかはその場に持ち込まないでただ楽しい時間を共有出来る仲間と言うか時間と言うか、そんな集まりなのかも」

 言われてみればそれもあるかも知れないと思う。母も、家での四六時中が先ほどのようなテンションでいるわけでもない。時には静かにしていることもあるのだ。

「ああ、ヨーグルトもそうだよ、確か」

「ヨーグルトも?」

「色んな乳酸菌が入っているんだけど、その中の主役の2つがお互いを増強し合って増えていくらしい。そうしてお互いの乳酸発酵を高めあいながら短時間でおいしいヨーグルトを作り出しているのです」

 彼女はまるで何かを見ているように言った。

「と、書いてあります」

 ふふふ、と笑いながら言う。スマホで検索していたようだ。

「私たちもああなりたいね」

 ふと、彼女が言う。私もそうねと言って、電話を切った。

 お互いが補完しあって生きていくとか、なんて美しいのだろう。
 大好きな彼女とずっと一緒にいられるなら、健康でいたいと思った。

 さて、ヨーグルト食べよう。

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【今日の記念日】

5月15日 ヨーグルトの日

菓子、健康食品、乳製品などを販売する株式会社明治が制定。日付はロシアの微生物学者で、1908年に食菌の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したイリア・メチニコフ博士の誕生日(1845年5月15日)から。イリア・メチニコフ博士はヨーグルトに含まれるブルガリア菌が不老防止に役立つということを研究し世界に発表。この研究のおかげでブルガリア菌を使ったヨーグルトが健康に良いと世界に広まった。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。



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