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10月28日透明美肌の日

 2年付き合った彼氏に振られた。つい、今さっき。2ヶ月前くらいからちょっとずつよそよそしいなと思うことが増えていたので、全く予想外だとは思わないけど、悲しいものは悲しい。何か策を講じるべきだったのかもしれないけれど、何もしなかったし出来なかった。もしかしたら何もしたくなかったのかもしれないと、振られた今思う。

 仕事もうまくいかない。何が悲しいって、運が悪いとか才能やセンスがどうとかではなく、単に自分の確認ミスとか、ちょっと後回ししたことのツケだとかで、弁解の余地がないこと。この期におよんで今言ったように『ちょっと』後回しした、とか逃げ腰なことを言ってしまう自分にうんざりだ。

 これらをツイていないと言っていいのかわからないけれど、ため息だけはつかせてほしい。

 あぁ、幸せになりたい。

「うぉっ!でっかいため息っすね」

 ちょうど通りかかった桜井さんが私のため息に驚いた。サバサバと愉快な女の子の後輩である。

「ま、ほら色々とね」

 何も聞かれていないままに言い訳のように半端な解答をし、にへっと笑う。我ながら情けない。

 桜井さんは、ふぅん、と言う顔をしてさっと振り返り来た道を戻っていった。

 なんだよ。ちょっとだけやさぐれた。後輩にさえ何か声をかけて欲しかったのかと自分の愚かさにまたため息をつく。

 休憩室には幸い誰もなく、窓際のカウンター席がとても落ち着くのだった。見下ろせば、忙しない車の流れがある。その横を見ると、きっと時間通りなのだろうけれど、時刻表が分からなければ適当に線路を走っているように見える電車が走る。

 私だけが止まっているようだ。

 あ、泣けてくる。

 そう思って俯く間際、左眼の視界の端に人影。私は勢い、振り向いた。

「うぉっ!びっくりした」

 毎度毎度、可愛い顔して『うぉっ!』って驚く桜井さんだ。

「ど、どうしたの」

 自分を棚に上げ上げ、聞いてみる。コトっと、目のまえに缶が置かれた。私の好きなミルクティー。

「これ飲んで、自分を労ってあげてくださいな」

 桜井さんはそう言うと自分の缶コーヒーを開けて飲んだ。私は、ありがとうと言ってミルクティーを開ける。後輩からの施しに、ちょっと泣けてきた。

「先輩、お肌が疲れています」

「え」

 お肌?まさかそこを突っ込まれるとは思わず、つい両手を頬に置く。桜井さんはじっと私の顔を見る。

「肌の綺麗な人が皆幸せなわけじゃないけれど、幸せな人は大体皆、透明美肌です。私統計ですが」

 急な格言。そして小さな統計である。けれど、言いながら微笑む桜井さんの頬は、確かに艶があった。触れなくてもその透明感から綺麗な肌であることが見てとれる。

「幸せになるのは急には難しいかもしれないですが、自分を労って、綺麗な肌になることなら出来そうじゃないですか?」

 両手の平にカサついた肌が水分なく触れている。まぁ確かに、なんて彼女の言うままに考えてみる。

「それから、幸せになるのもいいかもですよ」

 自分を労う、ね。

 とりあえず、私はまず私の肌を幸せにしてあげよう。

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【今日の記念日】

10月28日 透明美肌の日

美しい素肌を「透明美肌」と表現して、その大切さを再確認してもらおうと「美白の女神(ミューズ)」として知られる株式会社クリスタルジェミーの中島香里社長が制定。日付は10と28で「透明美肌」と読む語呂合わせから。英語ではclear skin day。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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