9月26日 "くつろぎ"の日
この歳で親友が出来るとは思わなかった。
その人とは娘の保育園で出会った。
最初は保護者会で顔を合わせた程度で特別何か話をしたわけではない。けれど慣らし保育を終えて、入園から1ヶ月がすぎた頃から顔を合わせる事が増えていく。
夕方のお迎えが大体同じ時間になるのだ。帰り支度をしながら世間話が始まり、徒歩通園も同じだったので、近くの曲がり角まで一緒に帰るのが常だった。
道中の会話はほとんどが子供の話ではあったが、時折話す親同士の話で、いくつかの共通点があることを知る。
当時の年齢は2人とも37歳で、夫は40歳であった。産休育休を終えての仕事復帰で職種を変えて事務職になったこと、そのために未だ仕事に不慣れなこと。
極めつめは、名前が同じであること。
『すず』と『鈴』で漢字とひらがなの違いはあるが同じ名前である。
それを知ってからは妙に気心が知れるようになった。
「同じ名前ってだけで急に親近感がわくね。末永くよろしく」
そう言って笑って手を差し出してくれた彼女の笑顔がとても嬉しかった。
よく話すようになって半年がすぎるころ、季節は今と同じ秋だった。仕事でミスをした私は、落ち込んだまま子供を迎えに行ったのだ。その日も彼女と同じ時間となり、帰り道もいつも通り一緒に歩いていた。
「ちょっとお茶していかない?」
私が少し驚いた顔をしていると、彼女は少し照れくさいような顔で続けた。
「今日は金曜日だし、軽食もあるから子供たちの夕飯はここで食べちゃってもいいじゃん。旦那さんに夕飯食べてきてもらえるならそうしちゃって私たちも食べてもいいかも」
確かにそのときの私のメンタルでは帰宅してすぐに夕飯を作ってお風呂に入れてと動くのは難しかった。夫には連絡しておけば問題ない。それに、恐らく彼女は私が落ち込んでいることを察してくれていたのだろう。私は有難く了承し、子供たちと四人で近くのコメダ珈琲店に入った。
子供たちには子供用のプレート、私と彼女はひとまず珈琲を頼んだ。
一口飲んだ瞬間、ホッと全身の力がゆるまった。多分、彼女が目の前にいてくれたこと、子供もそばにいてくれたこと、そこで飲む温かくておいしい珈琲と言う条件がそうさせたのかも知れない。
私は彼女にとても素直に相談をする事が出来たし、彼女もそれを受け止めてくれた。
以来、彼女とは月に1度程度、お互いに時間を作りこの店に来ることにした。
そしてその付き合いも今日で10年になる。私と彼女は47歳となり、お互いの娘たちは中学1年生になった。それぞれ2人目も授かり、そちらも同じ歳の子で現在小学1年生である。つまり、保育園の付き合いはもうないのだ。けれど私たちは毎月この店で顔を合わせては2人くつろぐ時間を作っている。
「鈴!こっち」
私が店に入ると、彼女が私を呼んだ。今日はお互い子供を夫に任せている。1ヶ月ぶりに会う彼女は・・・・・・特に変わりない。そりゃそうだ。毎月会っていれば大きな変化もないだろう。
それでいいのだ、特別な事である必要はない。
いつもの場所でいつもの彼女とくつろぐいつもの時間、それが宝物なのだ。
この歳で、親友に加えて行きつけの珈琲店が出来るとは思っていなかった。
幸せである。
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【今日の記念日】
9月26日 "くつろぎ"の日
愛知県名古屋市に本社を置く株式会社コメダが制定。同社は「コメダ珈琲店」を全国に展開し、多くの人にくつろぎの場を提供をしてきた。2018年に創業50年を迎え、お客様にとってさらに「くつろぐ、いちばんいいところ」であり続けるのが目的。日付は9と26で「く(9)つ(2)ろ(6)ぎ」の語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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