9月16日 牛とろの日
まもなく敬老の日、なかなか会いに行けないので、贈り物をしようと思う。そう言うと弟の啓太も賛成してくれた。
「何にしよう。じいちゃんは肉が好きだったよね」
「うん、ばあちゃんはお刺身好きだったと思う」
お互いに祖父母の好みを思い出しつつ話し合う。これだって、ここ2年ほど会えていないから、もしかしたら変わっているかもしれないな。
もちろんこの間、電話で話すことはちょこちょこあった。でもその場で改めて『食の好みは変わったか』なんてことは聞けていない。
「せっかくだったらさ、じいちゃんとばあちゃんが自分たちで選ばないようなものを贈ろうよ」
「そうだね。あの二人結構面白いもの好きなところもあるし、珍しいものでもいいかも。じゃあ少し探してみよう」
そう言って私は電話を切った。
面白いもの、サプライズ好きの祖父母が好みそうなものを探す。
私も啓太も、昔から祖父母が大好きだった。孫なんて皆そんなものだと思うけれど、例に漏れず私たち兄弟もそうである。
父方の祖父母は私たちが小さな頃にはすでに亡く、母方の祖父母に甘えることばかりだった。お互いの家の距離は遠く、新幹線に乗って向かうか車で数時間をかけて向かうかのどちらかしかなく、ちょっと会いに行くと言うことがなかなか出来ない。だから、今のように外出自粛なんてことになると途端に会えなくなるのである。寂しいものだ。
だから、時々テレビ電話をしたり、何かのイベントに乗じて贈り物をしたりするようになった。こんな時、普段はあまり連絡を取らない実家にいる弟とも連絡するようになるのだから、祖父母の存在はとても大きいと思う。
「なあ!『牛とろフレーク』、どうよ」
啓太から早速連絡がきた。『牛とろフレーク』、聞いたことがあるけれど、私はまだ食べたことがない。ご飯の上にかけて食べるらしい。
「啓太、食べたことあるの?」
「いや、ないけどずっと気になっていてさ。じいちゃんの好きな肉だし、『とろ』ってつくから、ばあちゃんも多分気に入ると思うんだよね」
結構強引ではないかと思いつつ、刺身の好きな祖母はご飯の上に乗っけて食べるもの自体が好きなので、これはこれでぴったりな気がする。サプライズと言うわけではないけれど驚いてくれることだろう。
電話で話しつつ、PCで商品サイトを見ているが、どれも美味しそうである。
「うん、これにしよう」
と、ほぼ二つ返事で了承し、そのまま敬老の日に届くよう贈答手配をかけて電話を切った。これでOKだ。
そこでインターフォンが鳴る。宅配便のようである。在宅勤務で良かったなと思いつつ、クール便の荷物を受け取った。
そしてそれを待っていたようにスマホが鳴る。
祖母からのメッセージだ。
「美味しそうなものを見つけたので送りました。今日届くと思う。熱々のご飯の上に載せて溶かして食べてね」
何だろうと思いつつ、中を開けて驚いた。
『牛とろフレーク』である。
ぽちっと送ったものが今ここに届くとは思わなかった。
なんたる偶然だろうかと驚きつつも、自分も牛とろを食べられる喜びが勝っていたりする。
そういえば、サプライズではいつも祖父母に勝てない私たちなのである。
いつもありがとう、じいちゃんばあちゃん。
それと、今日もありがとう。
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【今日の記念日】
9月16日 牛とろの日
北海道川上郡清水町で牛肉製品の製造・販売を行う有限会社十勝スロウフードが制定。同社の提携牧場であるボーンフリーファームと開発した「牛とろ」を多くの人に食べてもらい、その美味しさを知ってもらうのが目的。1997年に誕生した「牛とろフレーク」は凍ったまま温かいご飯にふりかけて「牛とろ丼」にすると絶品。日付は9と16で「ぎゅう(9)とろ(16)」と読む語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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