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12月4日みたらしだんごの日
クリスマスはお餅でいいじゃないかとどこか怒ったように言ったのは小学4年生の平太だった。
「お餅でクリスマスのパーティーするなんて聞いたことないよ。お兄ちゃんがお餅食べたいだけでしょ」
1学年下の妹である千秋が反論する。
「聞いたことないなら新しいだろ。格好いいじゃん!」
「そんなの、お餅の時点で格好良くはないでしょ、お兄ちゃん」
妹に言われ、ぐぬぬと口をつぐむ。
最近の平太は、ケーキを食べなくなった。口の中が甘ったるくなることが嫌に感じるようになったからと家族には言っていた。けれど、本当は『ケーキみたいな可愛くて甘いものを食べない格好いい俺』を演じているのだと、両親は元より千秋でさえそう思っている。それももう1年になるが、どうやら本当に食べたいと思わなくなってきたらしい。思い込みの力なのか、格好付けの力なのか、嘘からでたまことである。
「ケーキ!」
「お餅!」
2人の言い合いを聞きかねて、隣の部屋にいた兄の壮平が声を掛けた。
「平太はお餅が良くて、千秋はケーキがいいの?」
壮平が問いかけると二人揃って大きく頷いた。それを確認して画用紙と色鉛筆を持って机に広げる。
「お餅はさ、丸いお餅を積み上げるのはどうかな」
「お月見みたい」
千秋が言い、平太が笑う。小さな丸餅に見立てた丸を、下段から積み上げて描く。1番上の丸が黄色であれば、そこにすすきの葉を添えてお月見そのものだ。
でも、と千秋が再び呟くように言う。
「クリスマスツリーみたい」
すると、平太は鼻息荒く立ち上がる。
「ほらね!ホワイトクリスマスのツリーになるでしょ!だから俺言ったじゃん」
自信満々に言い放ち、勢い良く今度は座った。
「上から醤油をかけようぜ!」
それを聞いて千秋は少し悲しそうな顔をする。一方の壮平は色鉛筆を選ぶように筆箱の中を探っていた。
「千秋は甘いのがいいんだもんな」
頭にポンポンと軽く手を乗せ、千秋を慰める。それが嬉しかったのか、千秋は頷きながらにこりと笑う。
「平太はケーキが嫌なんだろ?」
平太も強く頷く。
「よし、じゃあこのホワイトクリスマスツリーにみたらしあんをかけよう」
探っていた筆箱から金色の色鉛筆を取り出し、画用紙の中で積み上がっている餅、いや団子の上からみたらしをイメージしたあんを描いていく。トロトロと見るだけでも味や食感が分かるように、ゆっくり滑らかに。
「ほら、白と金色のクリスマスツリー!」
格好いい、とも可愛いとも何とも言えない白と金色。二人はどう反応するかと見つめていると、千秋と平太が顔を合わせた。
「これ!これにする。みたらしだんご大好き」
平太は、ケーキや可愛らしいチョコレートなどのおやつを食べないだけで、和菓子なら好きなことを壮平は知っていた。その中でも特にみたらしだんごが好き。そして千秋も壮平自身も大好きなのだ。
「知ってる?みたらしだんごは『み(3)たらし(4)だんご(5)』でさ、千秋と平太と僕の学年なんだよ」
ドヤ顔でそれを伝えると、2人の目がキラキラ光る。
「お兄ちゃんすごーい!!!」
たまには和のクリスマスツリーも楽しいかもしれない。
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【今日の記念日】
12月4日 みたらしだんごの日
「みたらしだんご」とは砂糖醤油の葛餡をかけた串団子のことで、この商品を製造する山崎製パン株式会社が制定。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで幅広く販売されている「みたらしだんご」を、手軽なおやつとしてもっと食べてもらうのが目的。日付は「み」(3日)たら「し」(4日)だん「ご」(5日)の語呂合わせから毎月の3日、4日、5日とした。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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