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10月19日シュークリームの日

「シュークリームみたいなやつだ」

 そう言えば、いつかも言われたことがあったなと思い出した。

 言ったのは、高校の憧れの先輩だったと思う。聞けば、シュークリームは皆に好かれていて、苦手な奴はあまりいないだろうと、とても優しい顔で笑ってくれた。

 私は当時、みんなに好かれたくていつだって笑顔でいることを心がけていたのだ。人は鏡と聞いていたから、私が笑っていれば私を見た人も笑顔になると思ったのだ。半ば実験のような気分で始めたことだったが、気づくと自然と笑顔になっていた。

 私はそうして今も変わらず、シュークリームのように誰からも好かれるよう心掛けていた。

 でも最近、笑えていないのかもしれない。

 社会人になってもう10年が経過するけれど、未だ自信が持てないでいる。幸いなことに最初に配属された部署でそのまま変わらず経験させてもらっているから、それなりにこの部署での経験は増え、対応力もついてきたと思う。いろんなことが起きる中で、その都度自分で考える最善の策で対応してきた。それで失敗したこともあるけれど、成功したことの方が多い。

 でも、不安なのだ。

 いつも、これで良かったのだろうかと事が済んでから何度も反省する。最近は反省ばかりでうまく前が向けなくなっているのではないかとさえ思う。あれだけ笑顔を心掛けていたのに。

 これではだめだと思って、練習のために給湯室で笑ってみたら、久々に言われたシュークリーム。

「それは、どういう意味」

 私が聞くと、同期の田口くんは少し困ったように笑った。

「いや、悪い意味ではないよ」

「じゃあ、どんな意味よ」

 詰め寄ると、今度は笑わずに私と目を合わせた。彼はやっぱり困っているようで、でも私は怒っているわけではない。興味深いだけだ。

「きゃ、きゃべつ」

 きゃべつ?

「なぜきゃべつ」

 私が再び聞くと、田口くんがなぜか照れるように笑って答えた。

「シュークリームのシューはきゃべつでしょ。で、きゃべつって、万能野菜じゃん」

 確かにそうかもしれない。煮ても焼いても生でも食べられる。肉や卵と合わせればメインにもなるし、一方で千切りにすれば添え物にもなる。万能と言えば万能だけれど。

「その万能な葉の中に、いろんなものを隠している」

「・・・・・・私?」

 田口くんは頷いた。

「いや、田口くん、分からんです」

「だからさ、笑顔で立派に見える君も、その中には努力だったり、失敗だったり、時には甘えたりっていろいろ考えが詰まってるよねってこと」

 うーん、分かるような分からないような。考えていると、私はピンと来た。

「それ言うならロールキャベツもそうじゃない?」

 私がそう言うと、彼は軽く首を振る。真剣な顔をして答えた。

「君はロールキャベツじゃない、シュークリームの方。だってシュークリームの方がかわいいじゃん」

 そんな事を言われ、何だか気が抜けて普通に笑えた。昔言われた言葉と全く一緒なのに、全然違うシュークリームだった。

 彼はぐいと白い箱を私の前に差し出した。

「シューの部分を大きくし過ぎると、中身が足らなくなる。そろそろクリームの充電しませんか」

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【今日の記念日】
10月19日 シュークリームの日

スーパー、コンビニなどで大人気の「牛乳と卵のシュークリーム」をはじめとしたさまざまなスイーツを製造している株式会社モンテールが制定。、シュークリームをより身近なおやつにするのが目的。日付はシュークリームの語感と似ていることから毎月19日に。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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