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6月26日 スティッチの日

「梨花なんてもう知らない!」

 そう言われ、姉妹間での知らないとは、どこまで知らなくすることが出来るのだろう。と、分からないまま、4歳年上の姉と喧嘩をしてもう3日目である。


 分かっている、完全に私が悪いのだ。姉が読み終わったと言った彼女の小説を、私が本棚から持ち出し、その上どこかに忘れてしまったのだ。誰がなんと言おうと私が悪い。

 お姉ちゃん、ごめん。

 でも、本を買い直して返すと言ってもいらないと言う。読み終えているのだからそらそうかと思い、姉の希望の新しい本を買うと言ってもそれもいらないと言う。

 ならばどうしろと言うのかと聞けば放っておいてくれと突き放されてしまった。

 こんな喧嘩は幼い頃以来である。まして中学生と高校生でこんなことになるとは思わなかった。

 私達は仲が良い姉妹だと思う。自分だけがそう思っているのでは多分なく、姉も両親もそのようなことを親戚や友人に言っているくらいなので実際そうなのだろう。

 誰にでも優しく、明るい姉とそうでない私。騙されやすい姉とそうでない私。泣き虫の姉とそうでない······。お互いの凹みをうまくカバー出来ている姉妹だと思うのだが、まぁたまには外れることもある。

 普段あまり本を読むことなく、この一冊さえあれば、と言った風も見られない彼女なので、今回のようなことは意外であって正直私も困っている。困ったときには、昔姉にもらったお気に入りのぬいぐるみに密かに話しかけるのだが、まだ技術の追いついていない現代のスティッチ人形では答えてくれたり抱きしめてくれるといったスーパー能力はない。私はただ、彼の頭を撫でながらどうすべきかを考えるのである。

 うん、やっぱりもう一度謝ろう。夕飯までには帰ってくるだろうから、そのときにちゃんと話して、それで。

「あーっ!」

 急に大きな声を出したのは洗面所にいる母だった。何だなんだと2階から慌てて降りると、母は怒ったような困ったような顔をして何かを見ている。

「これ、梨花がやった?」

 私は2度目のなんだなんだを思いつつ、母のその視線の先を見る。

「あ」

 そこには無くしたとはずの姉の本。

 どうしたことか、ベコボコに波打ったような跡がある。もしかして。

「洗濯しちゃったじゃないのー」

 もーもー言う母を横に、私はその本を手に取った。水を吸っていて重たいきっとこのまま乾燥させてももう元にはもどらないだろう。

 そうか、あの日はポケットの大きいズボンを履いて出掛けたのだ。そうしてそのままそこに本をしまい、うっかり洗濯機のそばに置いたのだった。

「これお姉ちゃんの本でさ、無くしたのめっちゃ怒っているんだよね」

 私がそう言うと、母は「見せて」と言ってそれを手に取った。そしてパラパラ(とはいかないが)めくってすぐに戻した。

「大事なのは本じゃないと思うよ」

 そう言われて私も捲ると、中程になんだかボロボロの栞がはさんであった。

 それは私が小学生のときに姉に作った栞である。下手くそでカラフルなスティッチのイラストと、英語もあまり知らないくせに並べたアルファベット。

 まだ使ってくれていたのか。

 私は本と栞を持って部屋に戻った。

 私のスティッチに報告しなくてはならない。

『Ohana means family, family means nobody gets left behind. Or forgotten.』

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【今日の記念日】

6月26日 スティッチの日

2002年にアメリカで公開されたアニメーション映画「リロ・アンド・スティッチ」の主人公スティッチ。天才科学者のジャンバ博士が創り出したエイリアンのひとつで、試作番号が626号であることから6月26日を「スティッチの日」と制定したのはウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社。映画の大好評を受けて、続編やテレビシリーズ、キャラクターグッズなども大人気を集めている。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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