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10月15日トイコーの日
「はい、お誕生日プレゼント」
3歳になる新は、目の前に置かれたプレゼントを嬉しそうに受け取り、豪快に包装紙を破いた。それはもう盛大に破くので、父も母も大笑いだ。すぐに中身が飛び出した。
「僕の救急車!!!」
それは彼が欲しがっていたはたらく車シリーズの1つだった。シリーズにはいくつかの種類があって、新は最後までどれがいいかと悩んでいたが、救急車に決めた。消防車はクリスマスにする、と決心したように新が言っていたことにその時父は優しく笑った。今回は救急車で、とのとこらしい。
「パパ!遊ぼう」
満面の笑みで父を遊びに誘い、ボタンを押して救急車のサイレンを流した。おもちゃ屋さんで悩む際に何度も聞いたのに、『僕の救急車』になったそれから流れるサイレンに、新はどこか自慢げに笑ってみせた。
「きゅうきゃんのかたはどちらさまですか?」
『急患』が上手く言えないことやどちらにいますかを、どちらさまですかと言ってしまうことも微笑ましい。
「すごいね、かっこいい。いいなぁ」
父が褒めるように言うと、すぐに嬉しそうな顔を上げて見せたが、今度は一瞬にして困ったような顔を見せる。
「どうしたの?新」
救急車を走らせる手はそのままに新は口を開いた。
「僕、クリスマスにはやっぱりもう1個救急車もらう」
突然そのようなことを言い、母は驚いた。
「どうして?」
新は手を止めて答えた。
「パパと一緒に遊びたいから」
照れるように、けれど少し寂しそうに口にした。すると父は彼の顔を見て思い出したように急に立ち上がった。
「よし、ちょっと待ってて」
スマホを取り出し、どこかに電話を掛けている。その足はパタパタと動き、手には車のキーを握っていた。
「ちょっと出てくる。先にお風呂入ってて」
通話を終えるなりそう言って、玄関に向かっていった。何が何やらと母は困惑しながらも、心配そうに見つめる新を抱きしめた。
「パパ、すぐに帰ってくるって。先にお風呂入って待ってよう」
まさか買ってくるってことはないよねぇ。母はそんなことを思いながら風呂に入ったが、風呂から出る前に早くも父が帰ってきた。本当に早いと思いながら、二人も早々に風呂を出る。
身支度を整えて再びリビングに戻ると、父が嬉しそうな顔で新を迎えた。
「新!一緒に遊ぼう!」
手には新のそれとは違う救急車があった。同じはたらく車シリーズのようだが、随分と年季が入っている。
「パパ!救急車2個!」
新が驚いて父のもとへ走る。
「2台あるから一緒に遊べるよ。だから、サンタさんには消防車を貰おう!」
父がそう言うと、新はわぁい!と大きく跳ねた。聞けば、先の電話の相手は実家で、子供の頃に遊んでいたはたらく車の所在を確認し、取りに行ったようだ。
「昔の部屋に大事にとってあったんだ。さすがにサイレンは鳴らなくなっちゃったけど」
少し残念そうに言うが、新にはそれでも十分のようで、お構いなしに2台の救急車ごっこを楽しんでいる。
「おもちゃって、いつでも誰のでも、ずっと宝ものなんだね」
二人の楽しそうに遊ぶ同じ顔を見て、母も嬉しそうに笑う。
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【今日の記念日】
10月15日 トイコーの日
自動車や電車、バイクなどのミニカーやラジコン、乗用玩具の企画・製造・販売を手がける株式会社トイコーが制定。同社が2020年に創立40周年を迎えるにあたり、お客様への感謝の気持ちを伝えるとともに、商品を愛してくれるチビッ子たちに笑顔になってもらうことが目的。日付は10と15で「ト(10)イコー(15)」の語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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