9月6日 キョロちゃんの日(森永チョコボールの日)
昔からある定番にしては随分と冒険したなと思う新味を口に放り込む。カリッと奥歯で噛むと一瞬ヒヤッした気分になる。妙に蒸す小さな残暑の今朝にはちょうどよいひんやり感。
私はそのチョコボールを鞄にしまい、家を出た。
今日はクリームソーダ味が私の相棒だ。
きっかけは、いつも買うお気に入りの雑誌の付録にキョロちゃんのキーホルダーがついてきたことである。付録を気にして買うことはあまりないのだが、さすがに随分と立派に主張されたキャラクターグッズだったので、やっぱり気になってしまった。
多分、その時点で何かに負けていたのかもしれない。以来、ほぼ毎日チョコボールを持ち歩いている。
そして私はまんまとググってしまったのだ、キョロちゃんの歴史を。すると驚くことに結構昔に誕生したキャラクターであった。
キョロちゃん、54歳。我が父と同級生である。
ちなみに、現在私は20歳の大学生である。確かに子供のころから見ているお菓子だったから、きっと私よりは年上なのだろうと思ってはいたが、まさか私より33歳も上で、しかも父と同い年だとは思わなんだ。しかも現在のキョロちゃん、いやキョロさんは5代目だと言うのだからなかなかの老舗キャラである。
「いや、あんまり変わらんのでは?」
「ええ!?ほら、このくちばしの部分、世代が移る度にこう、丸い愛らしさが高まっていくじゃない」
歴代キョロちゃんを見た同級生がそんなことを言うので、私はうっかり反論してしまった。もちろん、チョコボールの中身も変わっているのだろうけれど、それを取り巻く環境、たとえばキャラクターやパッケージ、そしてお楽しみ缶の中身など、いろんなものが頻繁に変化を繰り返しているのだ。
「コレって、よく考えたらすごいことだと思うんだよね」
私は再び同級生に語りかける。
「大枠は変えないで、けれど都度小さな部分を丁寧に変化させているんだよ。おそらく時代の変化や企業努力、挑戦も随分とあるかもしれない。そう考えると、やっぱりキョロちゃんではなくキョロさんと呼ばなくてはならないような」
そう言って、今朝食べたクリームソーダ味を彼女にもお裾分けをする。
「おお、不思議。確かに、なかなか思いつかない味ね」
うんうんと納得してくれたようだ。私も同意である。
「なによりさ、こんな突飛な味や、興味をそそられるおもちゃのカンヅメとかさ、もうワクワクすることばかり考えている社員がいる会社ってことでしょう?」
そんなものはあくまで妄想でしかなかったのだが、それでも頭に浮かぶキョロちゃん企画に携わる社員さんたちは楽しそうに笑っているのだ。そして彼らの思惑の一つの通り、私は近頃金のエンゼル、銀のエンゼルに一目会おうと躍起になっているのである。
「・・・・・・キャラクターとか、お菓子一つで毎日が大きく変わるとか、ちょっと興味深いよね」
私は鞄につけたキーホルダーを手に密かに誓う。
私も、キョロちゃんと一緒に誰かを楽しませる毎日にしたい。
そう思い、私は気づく。
誰かを楽しませることが巡り巡って自分を楽しませることなのかもしれない。
ひとまず、一番近くにいる我が父にチョコボールを買って帰ろうと思う。
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【今日の記念日】
9月6日 キョロちゃんの日(森永チョコボールの日)
1967年の発売以来「おもちゃのカンヅメ」「キョロちゃん」などで、多くの人に親しまれている「チョコボール」。発売元の森永製菓株式会社が制定。チョコボールのおいしさと楽しさをアピールするのが目的。日付けは9と6で「キョロちゃん」の語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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