10月16日人と色の日·自分色記念日
私の瞳は赤みがかった茶色。肌は白く、照れたり焦ったりすると時折赤みが滲む。唇の色はピンク寄り。薄めのオレンジやピンクのリップを塗るのが良い。ラベンダーの淡いワンピースに小さめのシルバーのアクセサリーを付けて、鏡を見る。
これで、私は完成する。
「ねぇ、なんで服着るだけで自信満々なの?」
夫が不思議そうに尋ねる。どこかで耳にしたセリフに私は笑う。
「私に似合う色を身につけているんだから、自信なんて満々になるでしょ」
そうに決まってる、とは言わないけれど、そう思いながら答える。
私は、私の全身を私のための色で固めているのだ。完全武装した私は強い。
「行ってきます!」
私は前を向き、大きく右足を踏み出して家を出た。
「ねぇ、なんで服着るだけで自信満々なの?」
これは昔、私が妹に尋ねたセリフだった。二人ともまだ実家で一緒に暮らしており、毎朝起きると、リビングでうきうきと服を着替える妹に良く訊ねたものだ。
スタイリッシュな服や、綺麗なワンピース、オレンジめいたメイクに艶のある茶色いショートヘア。さっきまで寝ぼけていて、くすんだようなパジャマの彼女はこんなに輝いていただろうかと毎度思わせた。妹は決まって答える。
「えー、何でだろうねぇ」
私はその頃、オシャレには無頓着で疎かった。いざ挑戦してみようと意気込むものの、自身のセンスの無さにやられ、結局は黒と白とグレーに落ち着くのである。だから、キラキラと彩られた妹に密かに憧れていた。
「私も同じの着ようかな」
カップに入ったカフェオレを啜りながら小さく呟く。すると、ふわふわと着飾っていた妹が、少しだけ強い口調で私を制した。
「だめだよ」
私は驚いて、なぜかと聞いてみる。
「だって、これは私が私の色を着ているから似合って見えるの。お姉ちゃんにはお姉ちゃんに似合うものがあるんだから、同じ服や色をつけたところできっと似合わない!」
きっぱりと言い切ったのでいっそもう爽快だった。
そうか、似合わないのか。
「自分に合う色を探すといいよ」
そう言われ、妹に教えられるままパーソナルカラー診断をした。それをベースに後日、妹の友人でアパレルに勤める人にコーディネートしてもらったところ、まぁ妹とは全然違う服とカラーが出来上がった。
「うん!いいじゃん!」
「そ、そうかな」
これが、私の色。
私は照れていた。鏡に映る自分に満足していたのだ。そうかな、と言っているその裏で本当は、そうでしょ!とも思っていた。
そのくらい、私は自信が湧いた。色のない私に似合う色がつくことは、そのまま自信が付くことと同じようだった。だって、黒とグレーで沈んでいた私は今、自分に似合う淡いラベンダー色を見にまとい、確かに輝いている。
「ほらね、私の色とは全然違う」
そう言われ、改めて妹と今の自分とを見比べると、確かに違う。きっと最初の通りにただ妹の真似をしていたならば、また似合わずにそれがセンスの無さを連想させて凹んでしまうところだった。
「得意不得意と一緒でさ、みんな持っているものはそれぞれなんだから、足すものも引くものもやっぱりそれぞれなんだよ」
そう言って、私の着ないブルーのワンピースが似合う妹は笑う。
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【今日の記念日】
10月16日 人と色の日·自分色記念日
人が生まれながらに持つ髪や目、肌の色などと調和して、その人にいちばん似合う色が自分色(パーソナルカラー)。個性を引き立て、魅力を引き出すパーソナルカラーの効果的な活用法などを提案する一般社団法人日本カラリスト協会が制定。日付は10と16で「ヒトイロ=人色」と読む語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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