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5月21日 ニキビの日

 いつ出来たのか、顎のニキビが今日も痛い。

 触るといけないとか、つぶすと痕が残ると聞くので、私の顎でぽっちりとなるまですくすく育てるしかなかった。それも気づいて数日するとジクジク染みるように痛む。

「選んだ?」

 同期の実島くんが私のかごの中をのぞきながら聞く。

「まだ、実島くんは?」

「俺はもう決まった!」

 ほら、と見せびらかすように見せてくれたかごの中には様々な種類のアルコール飲料とつまみが入っていた。

「カクテルばかりね。学生みたい」

「なにおぅ!生田こそ、鏡で自分の顔見てばかりいて、学生みたいじゃないか」

 お互いに抱く学生イメージの偏りのひどさに思わず笑う。

「顔を見ていたんじゃないよ。ほら、顎にニキビがね」

「ニキビって・・・・・・青春まっただ中かよ」

 二人でまた笑い、私は適当にお酒をかごに入れ二人でレジに向かった。他の同期3人はすでに買い物を終えているようで、早くしろと視線が痛い。

 これから私たち同期5人でオンライン親睦会を開く。同期と言うととてもフレッシュだが、実際は今年30歳になる私たちだ。配属が分かれて7年が経つが、偶然にも来月から同じプロジェクトメンバーに選抜されたのである。

 久々の顔合わせをかねた親睦会。本当は実際に会って開催したかったのだが、今はなかなかそうもいかず、オンライン開催とした。せめてと思って、帰宅時間を合わせ、揃って会社を出て、皆で酒とつまみの買い出しをしている。飲んでいないけど、このあと飲み会だと思うと買い出しだけでもテンションはあがるものらしい。

 実島くんの言う通り、まさに青春のようだ。

「あ」

 青春と言われて思い出す。
 何年か前に駅前の占い師に見てもらった時のことだ。

『ああ、君は人よりも随分遅くに青春を迎えるんだね、これからだ』

 何を言っているのだとその場はポカンとした記憶がある。けれど、言われてみればそうかもしれない。私の中学や高校時代には青春と呼べる時間はほとんどなかったように思う。社会人になり、最近ようやく自由になれた気さえするのだった。

 そして、久々のこんなノリ。

「生田、電車一緒だよな」

 駅に着き、彼が言うので私は頷いた。他の3人は別の路線に乗るのだった。

「さて、いこうか」

 実島くんが歩き出す。

 彼の背中を見るのはいつ以来だろう。彼は転勤もしていたし、部署や企画が違うとこうも会わないものかと、この数年嘆いていたのだ。

 私は彼に会いたかった。

「青春ニキビなの?」

 少し前を行く彼が言う。私は追いつくように早足で彼に並ぶ。

「そうだよ。確かおでこが『想いニキビ』で、顎は『想われニキビ』だったかなぁ。私は想われているってことよ」

 青春をイメージして冗談のように笑って言うと、彼はおもむろに前髪を上げ、おでこを見せた。

「俺は想いニキビってこと?」

 おでこの真ん中にぽっちりニキビがあった。

「何これ、青春じゃないの」

 私は小さく吹き出し、彼も笑った。

「あっ!指が当たってつぶれたかも」

 彼が急に慌てておでこを気にし始めたので、やっぱりまた笑ってしまう。

「とりあえず、次のお休みは一緒に皮膚科でも行きましょうか」

 遅い青春もなかなか面白そうである。

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【今日の記念日】

5月21日 ニキビの日

「青春のシンボル」とされるニキビ。しかし、ニキビは顔などにできることが多い疾患であり、とくに夏場は要注意の季節。本格的な夏を前に悩んでいる人に「ニキビは皮膚科で治療が可能な疾患」であることを認知してもらうために、ニキビ治療薬を製造・販売しているガルデルマ株式会社と塩野義製薬株式会社が制定。日付は5(いつも)2(ニキビは)1(皮膚科へ)の語呂合わせから。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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