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5月20日 ガチ勢の日

「デートなのにそれでいいの?」

 そんなことを言ったのは、久々にランチをした昔のバイト先の友達だった。最近の休日は何をしているかと言う質問に対し、私が答えたら返ってきた言葉である。ちなみに私の答えはこうだ。

「彼のボクシングの練習が終わったら待ち合わせてデートする」

 私が言うと、冒頭の言葉とともに、彼女はどこか笑いながら続けた。

「汗、めっちゃかいてるじゃん」

 とりあえず、私は不快になったので、満面の笑みでそうねと答えた。

 あぁ、バイトで一緒に働いていた時には気が合って仲良く仕事をしてとてもいい時間だったのに、それはもう無いのだなと思う。もしかしたら彼女にそんな嫌な気持ちは無かったのかもしれないけれど、あるかもしれないし、ないかもしれないし、でも事実、私はただ不快になったのだ。

 そうねそうねとニコニコしていたら、相手も退屈に思ったのか、1時間もせずにお開きの申し出があり、私はそれにも満面の笑みで応えたのだった。


 私の最愛のガチ勢を鼻で笑うな。

 ふんっ!と鼻息荒く眉間にシワを寄せたのは、彼女の背中が遠くなった頃である。面と向かって言えるほど私は強くない。

 何だかモヤモヤしてしまったので、私はスマホにこっそり入れている彼のボクシングの試合写真を眺めることにした。

(はぁー、かっこいい)

 汗臭かろうが、その汗が飛び散ろうが、その熱気にあてられようが、懸命に頑張る姿は称賛されるべきである。もちろん彼もそうだし、彼じゃない他の頑張る誰かもそうなのだ。

 懸命に頑張る彼らは、汗がどうとか、それをどう見られるかとかそんなことはさして気にもならない。ただ、自分の能力を高めることに意識を向けている。ひた頑張っているのだ。

 そんなことを思っていると、やっぱり無性に彼に会いたくなるのだった。今日も彼はジムで練習中のはずである。今連絡しても繋がらないだろうなぁと思っては、彼の写真を眺め、弾むため息をつくのだった。

 練習が終わるまでは恐らく1時間近くあるだろう。仕方なしに駅前を散策することにする。そう言えばハンドクリームがないことを思い出し、近くのドラッグストアに入った。

 店頭には男性用化粧品なるコーナーが設けられており、初めて見る私は興味をそそられてその場に立ち止まる。

 男性も化粧品を使う時代なのかと妙に時代を生きた人のような思考が浮かび、なるほどなどと言ってみる。

「あ」

 コーナーの中には制汗剤もある。ロールオンタイプやスプレー、パウダーに至るまで様々な種類だ。どんなものかと香りを嗅ぐと、なんといい香り。女性用のそれとは少し違う甘い香りのものもある。嗅げば癒やされそう。

 目を閉じて考える。この香りが素晴らしいと思うのは、その前提に懸命な練習をして汗をかく私のガチ勢がいるからだ。汗をかくからこそ制汗剤がこうも魅力的に働くのだろう。

 こんないい香りの彼も良いかもしれない。

 彼の姿とその香りを重ねて想像しては僅かにニヤけたりして。

 私はそれを1つ手にとる。
 スマホが鳴り、私に着信を告げた。
 私はそれを確認し、真剣に練習する彼を思い浮かべながら私はレジに向かった。

 ガチ勢、万歳である。

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【今日の記念日】

5月20日 ガチ勢の日

大阪府大阪市に本社を置き、男性向けコスメブランド「ギャツビー」などで知られる株式会社マンダムが制定。汗やニオイを気にせず、さまざまな活動を本気(ガチ)で取り組み、楽しみ、夢中になる若者「ガチ勢」を応援するのが目的。日付は5と20を5×20と見立て、本気度の100%(5×20)を表すことから5月20日に。


記念日の出典

一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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