11月3日アロマの日
ラベンダーに似た香りの『ラバンディン・アブリアリス』と言うアロマオイルをコットンに2滴ほど染み込ませ、それをマスクの内側に置いて半分に折る。香りが適度にマスクに移ったなら、私は毎朝そのマスクをして出かける。
真正ラベンダーより少し刺激のあるその香りは、リラックスよりもリフレッシュ効果をもたらす。頭をさわやかに鎮静させ、自分の考えをシンプルにすっきりと、再発見をさせてくれるように思う。
新しい『今日の自分』としてリフレッシュするのだ。
「香りを嗅ぐだけで生まれ変わるなんて、そんな都合の良い話があるだろうか」
昼休み。アロマの効能を話す私に、同僚の長谷君が問いかける。例えば疑っていたり、いくらかの嫌みを含んでいるそれではなく、とてもきれいな正面からの問いかけだったので、私も素直に受け止めた。
「そうだね、これだけ聞くなら確かにちょっと怪しいかも。だって、香りを嗅ぐだけで生まれ変わったり、明るくなれたり元気になれたとしたら、医者も薬もいらないもんね」
確かにと2年先輩の近藤さんが言い、うんうんと長谷君が頷く。私はそれを確認して続ける。
「だから多分、効能的には確実ではないかも」
あくまで私の感覚だけど、と付け加える。
「そもそも人によって香りの合う合わないがあるからね。すっきりすると言うオイルを嗅いで、それがたまたま苦手な香りだったらどうしたってすっきりしないと思う」
ぷん、と挽きたてのコーヒーの香りが店内に広がりながら、私たちのテーブルに運ばれた。私と近藤さんが頼んだコーヒー。長谷君はわずかに眉間に皺がよる。コーヒーが苦手らしい。
「コーヒーもアロマの一種って言うよね」
近藤さんがそう言ってカップに口を付けた。
「アロマは香りと言う意味ですからね。で、こんな風に好き嫌いもあるだろうから1つのオイルの効能が万人受けするわけではない。だから、そんな都合のイイ話にはならないんです。その上で、私はアロマの効能の比較的大きな部分には『思いこみ』みたいなものがあると思う」
そんなことを私が言うので、二人の顔は妙に私を怪しんでいた。
「私は、毎朝ラバンディンの香りを嗅ぐことで新しい自分になっていると思いこんでずっとやっているので、ラバンディンを嗅げば新しい自分になるようになりました。それと」
私は自分の持つシーン別の香りについてを伝える。悲しいことがあったとき、仕事で考えがまとまらないとき、体が疲れているとき。
「全てそれぞれに効くと言われているオイルをその時々に嗅いでいます。その上で、私は思い込んでいるんです」
「香りの記憶、みたいなのと似ているね」
長谷君が言う。例えば焼き肉のにおいを嗅ぐとお腹が空くとか、人によってはコーヒーの香りを嗅ぐとほっとするとか、そう言うものと似ている。
「うん、それもある意味で思い込みみたいなものよね。アロマに手助けしてもらって、自分がこうなりたいと思う方向に進む。進みたいから、そう思いこんで香りを嗅ぐの」
私はやっとコーヒーを口にする。漂う香りが鼻をくすぐる。
「だから、私は香りの数だけなりたいものになれると思いこんでいるの」
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【今日の記念日】
11月3日 アロマの日
ヨーロッパで生まれ育った香りの文化のAromatherapy。その自然がもたらす香りの効用を認識し、感謝しつつ、日本文化のひとつとして定着させることを目的に、公益社団法人日本アロマ環境協会が制定。日付は国民の祝日の「文化の日」に合わせた。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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