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11月25日いいえがおの日

 鏡の前でにこっと笑ってみたら、左上の前歯の隙間に黒ごまがあって、笑った。 

 笑顔が先か黒ごま、もとい面白いことが先かとなると色々議論もありそう。でもとりあえずどっちが先でも笑っておけば良いのだと私は思っている。その上で、笑えない日があると言うことも理解しておくこと。そもそも人間は泣いて生まれてきたのだ。ずっと笑顔でいられるわけがない。


 小さなデパートの1階、正面入口を入ったその目の前で、私は受付をしている。

 35歳、独身、1ヶ月前に出来た彼氏とは週末別れる予定でいます。

「わかれるよね」

 ランチの明太子パスタを、皿の真ん中からフォークとスプーンでかき分けるようにして同僚の幸が言う。分かれるというか、それは分けたと言うのでは。

「受付嬢が好きか嫌いかってさ、ほんと好みが分かれるよ」

 幸が言い直すと、そのタイミングで私のパスタが運ばれる。イカとカラスミのパスタを前にお腹がなりそうである。

「受付っていつも笑っているイメージだからね。いつも笑っているのが良いと思う人と、それが気持ち悪いと思う人ね」

 私もフォークを手にし、彼女の言葉を崩しながらパスタを崩す。小さな麺の山の中からカラスミが出てきて、ふわっと香る。一瞬で幸せになり、思わず笑みがこぼれた。

「仕事とプライベートと分けているつもりなんだけどな。笑っているのがもう固まっちゃってるのかな、ロボットみたいに」

 私は巻いたパスタを口に入れ、さっき香った幸せを実感した。幸は私のそれを見て少し笑って言う。

「大丈夫、ロボットはそんな珍味を好まない」

 カラスミが美味しい。お酒も呑みたい。ぐいっと飲んで、この最近のグダグダも、固まった笑顔もとろっと流れていかないかしら。などと、しょうもないことを考えていると、彼からメッセージが入る。

『昨日はごめん』

 ただその一言で、昨日を思い返してしまう。

「いつも笑わなくてもいいのに」

 昨日は彼と初めてお酒を飲んだ夜だった。私はやっぱりカラスミをつまんで、それに白ワインがあまりに合うのでずっと笑顔でいたのだ。
 仕事なわけでも作っているわけでもなく私はただ楽しかったから笑っていた。そして彼はその私にそう言ったのだ。まるでいつもは無理に笑っているとでも言うように。

 付き合ってまだ1ヶ月。私の何が分かるだろう。もちろんそれは私にも言えて、私は彼の何が分かるだろう。
 何も分からない。でも楽しかったから、私は笑っていたのだ。彼にはそうは見えなかったようで、少し悲しくなった。

 彼からのメッセージが続く。

『いつも笑顔でいてくれるのは嬉しい』

『でも他の表情の君も見たいと思って言ったんだ』

『本当にごめん』

 3件目のメッセージが送られると、私は少し冷静になっていた。彼も、私に対して嫌な気持ちでいったわけではないのだ。いろんな顔が見たい、そんなの、私も一緒である。

 少しして、4件目が送られた。メッセージを開けて私は驚く。そこには満面の笑顔の彼がいた。

『僕も君の笑顔を見習います』

 画面いっぱいに彼の笑顔があらわれ、私は思わず笑った。幸に見せると、健康的ないい笑顔だと笑ってくれた。

とりあえず、面白いから笑おう。笑ってから、幸せになろう。

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【今日の記念日】
11月25日 いいえがおの日

熊本県熊本市に本社を置き、黒酢、ブルーベリー、肝油、青汁などの健康食品を取り扱う株式会社えがおが制定。「笑顔でいることで健康になる」「健康だからこそ笑顔になれる」との思いから、より多くの人に健康で笑顔にという意識を持ってもらい、日本を健康にするのが目的。日付は11と25で「いい(11)笑顔=にっこり(25)」の語呂合わせから。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。



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