5月28日 自助の日
「麻里ちゃん、これあげる」
広げた手のひらに、やさしく乗せてくれたのは五つ葉のクローバーだった。
「ええ!いいの?貴重なものなのに」
私が驚いて見せると、彼女はどこか誇らしげな顔をして笑った。
「じゃんっ!私もあるんだよ。ここ、四つ葉も五つ葉もいっぱいあるみたい」
同じように手のひらに広げたそれを見せてくれた。本当だ、同じ五つ葉のクローバーである。でもどこか彼女のそれの方が大きいなと思ってじっと見ているとその理由が分かった。
彼女の手のひらの方が小さいからそう見えるのだった。
妹の子供、私にとっての姪っ子であるほのかは今年小学2年生になった。あんなに小さな赤ちゃんだったのにと時々感慨深くなるのはきっと親でも叔母でも同じだろう。私はいつもそう思う。
姪っ子がもう8歳になるのだ。私が間もなく40歳を迎えるのも道理がいく。最近はもう、結婚はまだかと言われることもあまりなくなってきたので気楽になってきたけれど、反面、結婚しないならしないでその人生を考えて行かなくてはならないのだと切実になってきた。
いつだって悩みは尽きないものだ。
「いいことあるよ」
ほのかがにこりと笑う。
「ああ、クローバーだから?」
私がそう言うと、彼女は大きく頷いた。
「幸せになれるんだよね」
「うん、確か意味とかあるんじゃないかな」
私はスマホを取り出し、五つ葉を調べてみる。
探せばいろいろな意味合いや解釈が出てきてまとまらないが、適当なサイトを開いて読み上げた。
『希望』
『知恵』
『財運』
『健康』
『愛』
ほう、どれもなかなか魅力的である。
「つまりはたくさんの『幸せ』ってこと」
「すごいね!色んな幸せになれるんだね、嬉しいね」
満足げにほほえみ、彼女はまた草むらにしゃがんだ。ママの分も探すのだと意気込んでいる。私も一緒に探そうとしゃがむと、彼女の小さな丸い背中が見え、妙にいとおしく思う。
ああ、これがきっと愛なんだろうとふと気づく。
別に、『愛』の対象が必ずしも配偶者や自分の子供でなくても良いはずで、私はその対象が姪っ子にあるので、それでも十分だ。
ならば『希望』はどうだろう。私の人生の希望、将来の夢ともいえるだろうか。そう言えば小さな頃の夢はお店屋さんになることだった。なんの店か分からないけれど。私がほのかと同じくらいの年の頃、私の希望はソレだったのかも知れない。たとえばお店屋さんになるとして、そのための『知恵』がいるし、開業するには資金がいるから『財運』も必要だ。
人生100年時代と言われる時代だ、あと60年はいきられるかも知れない。40歳なんてまだ折り返しにもきていないじゃないか。
まだまだ、これから希望は描ける。小さな頃の夢をもう一度描いても良いのかも知れない。
そのためには『健康』が必要である。疎かにしがちだが確かに重要だ。そう言えば保険見直さなきゃ。
「麻里ちゃん、なに笑っているの?」
未来を思い描く間に私は笑っていたらしい。慌ててあたりを見渡し、ソレを手にとって彼女に見せた。
「ほら、私も五つ葉見つけたよ」
見渡せば意外に豊かな人生が送れるかも知れない。
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【今日の記念日】
5月28日 自助の日
一般社団法人生命保険協会が制定。人生100年時代を迎える現代社会において一人ひとりが豊かな人生を送るために、ライフプランや資産形成、健康の増進、保険などで自ら将来の準備をする「自助」について考える日としてもらうのが目的。日付は5と28で「自助」にとって大切な「希望、知恵、財運、健康、愛」を意味する「五(5)つ(2)葉(8)=(いつつば)」の語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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