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11月27日組立家具の日

 模様替えをしようと思い、今使っているカラーボックスの中身とそれに伴い棚板の高さを変えることにした。我が家では5つのボックスを使っており、今回は今まで触れてこなかった1つを変える。妻の梨花が使うピンク色のカラーボックス。

「私の夢と宝ものが詰まっているのよ」

 そんなふうにどこか懐かしみながら中にしまっていたものをとても大切そうに取り出していく。それは5年前、結婚当初に買った最初のカラーボックス。

「あ、これ初めて旅行に行ったときにお揃いで買ったブックマークだ」

「よく覚えていたね。そうそう、大事にしすぎてしまい込んでた」

 彼女に渡すと、どこか愛しむようにまた微笑む。使わないのはもったいないね。そう言って自分の手帳に挟み込む。こう言うすべてが彼女の夢と宝ものなのかと少し嬉しい。

 

 彼女のピンク色のカラーボックスの他は、全て白色のそれで揃えている。今回新たな利用に際し、ピンク色がいいと意見が合致した。新しいボックスを買おうかとも考えたが、既に5つもあるし、家の中もそんなに広くはないので整理整頓も兼ねて中身を移そうという話になった。彼女のボックスの中身は他の白いボックスへ。その白いボックスの中身は他の場所へ移したりこの際断捨離してしまったりと、少し持ち物もコンパクトになる予定である。

「私のもの、どれも捨てられないなぁ」

「うん、大事なものはそのままでいいよ。あぁ、でもいい機会だから、例えば引出しを足したり、棚板を外したりして、使いやすくしてもいいね」

 提案しながら、自分のボックスの中身や棚の高さも変えようかと思案する。コレクションしている小さなフィギュアたちをボックスの上ではなく中に並べてもいい。いい高さに自分で棚を変えられる。そう考えると、使い勝手の良い家具である。

 彼女が2度ほど部屋を行き来し、残りの重たい荷物は僕が運び、やがてピンクのカラーボックスの中身が空になった。

「夢と宝もの、移動完了です!」

 敬礼をして報告してくれたので、僕もウム!と返す。

「具合は大丈夫?あとは棚の高さを変えるだけだからリビングで休んでいてよ」

 僕が言うと彼女はありがとうと言って部屋を出ていった。よし、と一息つき、僕は2枚ある棚板を取り外し始める。存外簡単に外せたので少し肩透かしだったが、1枚外し、2枚目も外した。今度は新たな高さにはめ込むわけだが、板を持って、厚み2cmほどの側面に何かが書いてあることに気づく。

「結婚して良かった」

 マジックで書かれたそれはおそらく彼女の字。こんなところに隠れて書いたのか。想像すると微笑ましい。僕はリビングで休む彼女に声をかける。

「赤ちゃんが生まれたら、棚板の側面にメッセージでも書こうか」

「なにそれー」

 そう言った数秒後、控えめながら小走りで彼女が部屋にやってきた。どうやら思い出したらしい。

「見た?」

 恥ずかしそうに聞く彼女に、僕は笑って返す。間もなく生まれてくる我が子の為に、僕は板をはめ、カラーボックスを完成させる。生まれたら、また板を外して側面にメッセージを書こう。

 こんなふうに家族の幸せを自分で組み立てられる家具は、なかなかない。

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【今日の記念日】

11月27日 組立家具の日

和歌山県海南市の家具、インテリア用品、医療機器などを扱う株式会社クロシオが制定。1967年に同社の深谷政男氏によって考案、命名された「カラーボックス」が大ヒット。その歴史をふまえて組立家具を普及させていくことが目的。日付は深谷政男氏の誕生日(1941年11月27日)にちなんで。

記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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