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6月14日 手羽先記念日

 久々にビールをぐいっと飲みたい。おいしいつまみも一緒に。

 そんなことをふと思ったのは昨日のことだった。すると夫も同じタイミングでビールが飲みたいなぁとつぶやいたのだった。

 珍しいことである。

 私も彼も普段お酒を飲まない。2人揃ってそんなにお酒が好きなわけでもないのだ。3人の子供たちも何となくそれを知っているので私たちの発言には驚いたようだった。

「いいじゃん、2人で飲んでおいでよ」

 長女の花菜が言う。明日の夕飯はうちらでするし、なんてことを次女の由樹が言った。俺は一緒に行きたいとぽつりと秦が言う。ああ、手が掛からなくなったんだなぁとここで実感。

「そうしたいところだけれど、感染症も怖いし、今は止めておこうかな。そのかわり、明日の夕飯はテイクアウト、パパとママはお酒を飲ませていただきます!」
 高々と宣言をして、昨日を終えた。


「行ってきます!」

 今朝の私は、いつもより元気な声が出ていたかも知れない。心なしか夫も同じように見える。

 ビールとつまみなんて、一般家庭の多くが日常にしている楽しみなのだと思うが、我が家にはない。それが突然降って沸いた(沸いたのは気持ちであるが)のだからちょっと興奮してしまう。

 ビールを楽しめないなんて人生の半分を損していると何度言われたことだろう。損をした気は全くなかったけれどこれまでの損が一気に幸福となって降り注ぐのではないかと妙に期待する。

 今日1日の仕事を何とかこなし、しっかり定時で退社する。予約していた時間にテイクアウトをし、もちろんビールを買って帰宅した。

 家にはすでに夫がいた。

「じゃんっ!君の好きな幻の手羽先ー!」

 台所に入った私に彼が差し出した。私の大好物である。

「わー!めっちゃ嬉しい!ありがとう」

 私の好物だと言うことを夫が覚えていてくれてそれを買ってきてくれたことがまず素直に嬉しい。

 昔はよく食べに行っていた幻の手羽先。最近はなかなか食べに行けていなかったので大喜びの私である。

「あ、パパとママ、もうすぐ結婚15年じゃん!久々の乾杯記念に写真とってあげる」

 そうなのだ、今月後半には結婚記念日が控えている。15年か、そうだったねと、知っていたけれど今気づいたように私と彼も笑った。

「あ、ちょっとまって!ビール持っている姿がいい!もう次いつ飲むか分からないから」

 私は急いでビールをグラスに注ぎ、笑っている彼に渡す。右手にビール、左手に手羽先で身構える。構図だけ見ればなにも珍しくない酔いどれ夫婦の日常である。

 ハイチーズでほほえみ、写真を撮ってもらう。その勢いのまま、乾杯をし、ビールをごくりと飲んでみた。

「あ、おいしい!」

 次いで手羽先を。

「あっ!めちゃくちゃおいしい!」

 私が言うと、夫も同じ流れで飲んで食べ、笑う。

「ビール片手に手羽先なんて、俺たちも変わったんだなぁ」

 しみじみという彼の嬉しそうな顔は、昔から見る私の好きな彼の笑顔のままだった。

 変わるものも、変わらないものも身近にあり、その変化を見られることが幸せなのだと私は一杯目を飲み干した。

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【今日の記念日】

6月14日 手羽先記念日

手羽先の唐揚げが名古屋名物といわれるほどまでに、全国にその名を知らしめた「世界の山ちゃん」を展開し、愛知県名古屋市に本社を置く株式会社エスワイフードが制定。日付は「世界の山ちゃん」の創業記念日である1981年6月14日から。手羽先に感謝する日。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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