2月25日とちぎのいちごの日
「わぁ!夢みたい」
満面の笑みを見せてくれた7歳長女の凛花は、久々に飛び跳ねて喜んでいた。4歳長男の翔太は一瞬ポカンと口を開けていたが、状況が分かるとやっぱりこちらも飛び跳ねた。
先週末のことだった。
スーパーで買い物をしていた時、果物コーナーには甘い香りが漂っていた。ああ、もうそんな季節なのか。いちごがずらりと並んでいた。
私も家族も皆いちごが好きである。最近のいちごは様々な種類があるが、うちは昔からとちおとめ好きである。甘みと酸味のバランスが良く、食べると止まらないのだった。
「・・・・・・狩りたいな」
ふと横にいた凛花がつぶやくように言った。巷で話題のアニメか何かの話かと聞いてみたら、どうやらそうではないらしい。
「いちご狩りしたい」
いちご狩り!可愛らしい回答で良かったと安心しつつ、『いちご狩り』かと引っかかる。
例年、私たち家族はこの季節になると栃木へ旅行にでかけ、その先にあるビニールハウス農家で毎年いちご狩りのお世話になっているのだった。
けれど、今年は残念なことに流行風邪の影響もあって外出を自粛しているため栃木旅行には行っていない。
「栃木で食べるちょびっと酸っぱいけど味が濃いいちごがいい」
前回行ったのは1年前だというのに良く覚えていること。
「そうだねぇ、いちご狩りして食べたいねぇ」
私はそう言って、ぼんやりと今年は行けないのだということを彼女に伝えた。
でもまあ、確かに私も食べたいし狩りたい!
そこからはもう、母親の意地である。
毎年お世話になっていたいちご農家さんに連絡をし、いちごを送ってもらった。せっかくならおいしいいつものいちごを食べたい!
そして念願のいちごが今日届いたので、夕食後にソレが出来るよう手早く準備する手はずを整えた。夫の帰りも早く、夕飯も簡単なものにした。すべてはこのあとのため。
「よし!」
私は食器を素早く片付け、用意していた洗濯ロープと木製ピンチを取り出した。もちろんすべて消毒済み。冷蔵庫からたんまりと洗っておいたいちごを出してテーブルに置く。子供も夫も何が始まるのかとポカン顔である。
「パパ、ロープそこに張って。3本とも。翔太はそのロープにピンチをつけていく。で、凛花はそのピンチにいちごのヘタをつけていく」
我ながらてきぱきと手際よく進められている。子供たちも黙々と作業に入った。
そのおかげで思ったよりも短時間で完成した。
「じゃーん!!おうちでいちご狩りしよー!!」
私がそう言うと冒頭のように子供たちは喜んでくれたのだった。
「おうちでいちご狩りが出来るなんて夢みたい!ママ、ありがとう!」
「あ!俺の好きないちごの味だ!」
凛花も翔太もはしゃぎながらピンチにつけたいちごを狩っていく。たくさん買ったとは言え、早くしなくてはなくなってしまいそう。私と夫も参戦した。
「うちはもうこれ、栃木だね」
凛花が口いっぱいにいちごを頬張りながら言う。
滅多にないだろう緊急事態なら、滅多にできない『おうちで栃木』もいいかもしれない。
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【今日の記念日】
2月25日 とちぎのいちごの日
JA全農とちぎに事務局を置く「栃木いちご消費宣伝事業委員会」が制定。1968年(昭和43年)からいちごの生産量日本一を誇る栃木県。「とちおとめ」「スカイベリー」など美味しい栃木のいちごをより多くの人に知ってもらい、食べてもらうのが目的。日付はいちごの流通の多い1月から3月の中の「と(10)ちぎのいちご(15)」を10+15=25とした25日をそれぞれ記念日としたもので、1月25日、2月25日、3月25日の3日間。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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