12月9日クレープの日
スーパーに昼ご飯の買い出しに出かけたあと、甘いものが食べたいねとコンビニに入ってスイーツコーナーで2人立ち止まっているところだった。
「ああ、癒されるね」
「昨日がっつりスイーツ食べたでしょう」
そう言う僕もやっぱり物色している。
「スイーツ欲は無限なんだよ、篤は違うの?」
彼女は自分の好きなクレープを手に僕に言う。僕も同じように、けれど違う味のクレープを手にとって返す。
「そりゃ僕のスイーツ欲も無限だよ」
合致したのでレジに向かった。こういうくだらないやり取りが出来る妻と僕の毎日は何とも愉快である。 甘くておいしいクリームたっぷりのクレープを買ったから、昼食のあとの幸せが出来たねと笑いながら帰宅する。
「そう言えば、おかずクレープは食べたことある?」
そう言われて、記憶を探ってみたけれどそんなモノは見あたらない。
「ない、と思う」
「私もないんだよね。ねぇ、お昼ご飯にクレープ作ろうか!」
うきうきと、それは楽しそうな表情で彼女が言う。そもそもお昼ご飯はグラタンの予定で買い出しに行ったのではなかったか。
「そうだよ。でもそんなの、クレープで巻いて食べればいいじゃない」
そうねそうねと頷いて、僕はすんなりと彼女のあとをついて行く。
一度やってみたかったという彼女はとても楽しそうだ。でも僕はちょっと引っかかっているところがないわけでもない。
おかずクレープっておいしいのか、と思ってしまうわけだ。
「まあ、でも結局は中身をおいしくすればいいわけよね」
彼女はそう言いながら、ホワイトソースを丁寧に作り、僕は具材となるソーセージやトマト、ブロッコリーやアスパラにタマネギ、じゃがいも、もちろんチーズも用意しておく。このまま行けばグラタンだ。
今はちょっとインターネットで検索をかければ山のように色んなレシピが出てくる。どれが良いかも分からないけれど、彼女はその中から拾ったレシピを表示させてクレープ生地を作り始めた。
「クレープはきっと、一瞬が勝負」
などと鬼気迫ったように言い、バターを落として温めたフライパンにお玉いっぱいの生地を入れた。少し高い位置からとろーっと。すると彼女はすぐに取っ手に触れ、ゆっくり、そうかと思うと手早く手首を回しながらフライパンの中の生地を回す。ふぅっと出来上がったのは凹凸のあるクレープ生地だったが、少々の焦げ目もついておいしそう。
ホワイトソースを野菜やソーセージ、チーズと一緒にオーブンで温めた後、クレープで包んだ。
「あっつい。でももちもちの生地にとろーりグラタン、おいしいね」
「そうだね。生地もそんなに甘くない感じ。うん、おかずもアリだ」
僕も彼女もほふほふとおかずクレープを口にする。浮かびあがる湯気に合わせて僕の気持ちも、きっと彼女の気持ちも温かく幸せになる。
「次に何作ろうか。シンプルにハムチーズとか」
「ああ、それもいいね」
テーブルに載る色々な具材を見て、僕らは顔を合わせた。
「でもやっぱりこのあとに甘いクレープがあるって知っているのも幸せよね」
ほふほふと温かい幸せと、あとにくる甘い幸せにくるまれてクレープ1つで、素敵な休日になる。
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【今日の記念日】
12月9日 クレープの日
クレープをもっと身近なおやつにしたいとの願いから、さまざまなケーキ、スイーツを製造販売している株式会社モンテールが制定。日付は数字の9がクレープを巻いている形に似ていることから。毎月9日、19日、29日と、9の付く日を記念日とすることでより多くの人にクレープの美味しさを知ってもらうことが目的。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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