2月24日ブルボン・プチの日
いつだったか、祖母にブルボンプチの『あげ丸』を買ってあげたことがある。遊びに行くのに手みやげがないことに気づいたのが、すでに祖母の家の近くになってからで、急遽コンビニで買ったのだ。
甘口醤油味で、カラッと上がった丸いボコボコの形をしたお煎餅。昔ながらの味で、祖母はこの味のお煎餅を気に入ってよく食べていたのを知っていた。
「あら、これ小こくて可愛いね。口に入れるのにちょうど良いサイズだわ」
思いの他ウケたので私はちょっと嬉かった。依頼良く買っていく。
そして祖母が食べるときには、必ず3歳の我が娘も嬉しそうに食べるのだった。
「ばぁばのお煎餅、おいしいねぇ」
「ね、蛍ちゃんの小さな手にもぴったりねぇ。あら、おててが白くて可愛らしいわね。食べちゃいたい」
そう言って、祖母が娘の手を取り、優しくそっと撫でてくれる。娘は祖母の物言いが面白く、ケラケラと楽しそうに笑うのだ。
「あ、ばぁばのプチ!」
お菓子売場を通ると、蛍はすぐにそれを見つけた。祖母が好きな『あげ丸』だ。いつの間にばぁばのプチと、呼ぶようになったのかは知らない。
「そうだね、ばぁばの好きなお煎餅だね」
「ばぁばのプチはいっぱいあるねぇ」
目の前に広がったプチの棚に彼女は目を輝かせた。クッキーだ!とかポテトチップスもあるねと次から次に喜んで見る。これは今日のおやつにプチだな、そう思って私もどれにしようかと悩んでみる。
「あ、蛍、これにする」
そう言って彼女はプチえびを選んで手に取った。今まで食べたことのない味で、クッキーが好きな彼女にしては珍しい。私はいいよと行ってそれをかごに入れ、残る買い物をこなしてレジに向かった。
さて帰ろうとしたところで、車の前、蛍が何か難しい顔をする。
「蛍?どうしたの」
「今からばぁばのおうち行く」
さっき買ったお菓子を握りしめ、ぎゅっと口を結んでいる。
「今日は行かないよ。またパパもお休み日に行こう」
実は行けないことはない。祖母の家までは車で30分ほどだし、今はまだ14時を過ぎたころ。けれど先週も遊びに行っているので、今日は行かなくても、と私は思うのだった。
「やだ!行く」
「また今度でいいじゃない」
「やだ!今日がいい」
「おやつも買ったからおうちで食べよう」
「やだ!ばぁばのおうちで食べる!」
久々のイヤイヤである。こうなるともうなかなか引かないのである。けれど私も既にくたくたであり、家に帰りたいと言う気持ちもある。こちらもちょっと引けない。
「今度ね」
「今日!」
同じセリフの攻防に飽き飽きし、チャイルドシートになかなか座ってくれない娘にイラッとする。ふつふつと頭の中があつくなり、私は意を決して口を開く。
「じゃんけんで決めよう」
そして私はあっさりと負けるのであった。
最近よく、色んなことをじゃんけんで決める。それはどっちに転んでも大して問題でない場合だけだが、例えばそれで蛍が負けても意外にすんなり受け入れてくれるのだった(もちろんそうでないこともある)。
「なんでばぁばのおうち行きたいの?」
チャイルドシートで歌を歌う彼女に聞くと彼女は少し考える素振りを見せて言う。
「この間、蛍の白いおてて食べちゃいたいって言ってたでしょ?今日おやつにかったプチえびのおせんべい、蛍のおててに似てるからばぁばに食べさせてあげたかったの」
なんとも可愛らしい理由だった。最初から連れて行ってあげても良かったなと反省しつつ、子供もおばあちゃんも大好きなプチは偉大だなと感心してしまった。
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【今日の記念日】
2月24日 ブルボン·プチの日
新潟県柏崎市に本社を置き、数多くの人気菓子を製造販売する株式会社ブルボンが制定。同社が1996年から販売する「プチシリーズ」は手軽に食べられる大きさのビスケットや米菓、スナック類など24種類。そのバラエティ豊かな品揃えと、色とりどりの細長いパッケージで人気の「プチシリーズ」をさらに多くの人に楽しんでもらうのが目的。日付は24種類にちなんで毎月24日に。同社は「ブルボン・プチの日」の愛称を「プチの日」としている。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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