6月7日 ムダ毛なしの日
職場の先輩に婚約報告をした。
「おお、おめでとう!!ついに、だね」
彼のことはつきあった当初から伝えていたので、話は早い。電話口でパチパチと音が聞こえるのは拍手をくれたのかも知れない。
「ありがとうございます、いつかはそうなれればと思っていたんですが、思ったより早かったです」
そうなのだ。何となくこのまま行けばきっと彼と結婚するんだろうなぁと思っていたが、今とは思っていなかった。ついに、と言うよりはもう!?と言う感想の方が正直大きい。それ自体は問題ないのだが、想定外だったのは意外と自分のやることや考えることが多くてなかなか追いつかないとこだ。
「結婚式はまだ先なんだね、じゃあのんびり仲良くやれるじゃない」
「そうなんですが、え?って思うちっちゃいことが増えてきて・・・・・・」
先輩に言うと、たとえばどのようなことかと聞かれたので、私は一部を紹介してみる。
人気の式場は早いうちから予約が埋まると聞いたので、まず私たちは結婚式相談窓口なるところに相談に行くことにした。その時、彼はどこに窓口があるのかなと私に言った。私は場所を調べる。いつの予約枠が空いているかなと言うので、私は調べる。予約枠の空きを伝えると、じゃあその日にしようと言うので、そのまま私が予約をした。
「え、何がイラッとすることあるのよ」
「だって、彼は聞く一方で調べて行動するのは私ですよ。こんなのよくあることだけど。自分でもやってよって思っちゃう」
私が軽く思いだし憤りをしていると、先輩は軽く笑う。
「それで、他には?」
先日のデートで、横に並んで歩いていたときにお互いの腕が擦れるようにぶつかった。その瞬間、彼は言ったのだ。
「『チクッとした!トゲかな』ですって!!トゲな訳ないでしょ!!遠回しなムダ毛処理ちゃんとしてアピールかと」
またもや軽い思い出しをしているとやはり先輩は笑う。
「いいじゃん、彼。面白いじゃないの、面白いと言うか可愛いじゃない」
けらけらと愉快そうに笑う。
「面白くないですよ!こんな感じが多くてちょこちょこイラッとしちゃってて。大体、結婚式の準備ややることだって圧倒的に女性の方が多いじゃないですか。もう疲れちゃう」
後半グチのようになってしまい、ため息が漏れた。
最近は仕事の忙しさも相まって、彼のこんなお茶目なエピソードをにこやかに笑ってあげられないのだった。その実、笑ってあげられない自分や、ささいなことでイラッとしてしまう自分に腹が立っているのだ。
「彼の腕に当たったときに痛くさせないためにムダ毛処理するなんて」
「それはまた突飛な発言だけど、まぁ、そうね。あ、でもたとえばムダ毛処理に関して言うと、彼の為だけではないと思うよ」
私は何かを疑うようにして先輩の意見を聞く。
「自分で自分を抱きしめたときにそうだった方が気持ちいいから」
自分の為に綺麗になってね、そんなことを最後に言って先輩はまたねと電話を切った。
自分で自分を抱きしめたとき。
先輩はかくもサラリとそんなことを言ったので、ひとまず言われたとおり私は自分をぎゅっと抱きしめた。両腕が交差するそこに当たる肌がつるつるとしていることに気づく。確かに気持ちがいい。
昨日、ケアしておいて良かった。
なるほど確かに、彼の為にとムダ毛処理をしたとしても、やっぱりそれは自分の為にもなる。結婚相談所の窓口予約にしたって、彼だけが使うわけでもない、二人で行く場所なのだ。自分の為でもある。
もう少し、気を抜いてみようかなとぼんやり気づく。
気持ちも体もすべすべにしてみよう。
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【今日の記念日】
6月7日 ムダ毛なしの日
夏に向けて素肌を出し始める女性たちに、思わずさわりたくなるすべすべ肌を手に入れて欲しいとの願いから、世界で日本で売り上げナンバーワンの除脱毛ブランド「ヴィード」を展開するレキットベンキーザー・ジャパン株式会社が制定。日付は6(ムダ毛)と7(なし)で「ムダ毛なし」と読む語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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