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0114_ロイヤルミルクティを2つ

「一旦付き合ってみましょうよ」
 新原さんがため息を吐くようにして言うので、私は少し悲しくなって手持ちぶさたにほとんど空になっているロイヤルミルクティのカップを口にした。
「好きかどうか、自信がない」
「相変わらず身も蓋もない言い方をしますね」
 彼もロイヤルミルクティのカップを手にする。彼の方はまだ残っているようだった。
「私は、ちゃんと好きになってから付き合いたいから」
 そう言うと、新原さんは困った顔をして笑う。
「本当に、真面目だよね。でもそう言うところを好きになった手前、強くは言えないです」

 新原さんは会社の同僚で、2つ年下である。何年か前に転職してこられた方でこの春から同じ部署になった。
 私は、彼が好きだった。
 だから、彼が私を好きだと言ってくれたとき、本当に死ぬほど嬉しかった。天にも昇る気持ちと言うのはこういうことかと実感した。30年生きてきて初めてだった。そうして、私は考え始めたのである。
 私は彼のどこが好きで、果たしてこの先どうなりたいのだろう。
 考えると、わからなくなってしまった。わからなくなってしまうと最後、答えを出そうと考えて考えて堂々巡りを続ける。すでに告白されてから3ヶ月が経っていた。
「なにか、僕に苦手なところがありますか」
「・・・・・・ないです」
「じゃあ、一旦付き合いませんか」
 このやりとりはもう何度しただろう。たしか彼はこの日も私と同じロイヤルミルクティを飲んでいた。
 彼はきっとあきれていることだろう。でもどうしたって、不安なのだった。彼と付き合って、もし彼が思っていたような私じゃなかったら、期待はずれにしてしまったら、そう思うと、怖くて付き合うことなんて出来ない。30年生きてきて今さら何をと自分でも思うのだけど、慎重になってしまう。

「どうなったらゴールなんだろう」
 何度目かの今日、おもむろに彼が言う。私は少し考えて口にした。
「うーん、他人同士だと言うのはもちろんわかっているけど、その上でお互いを2人で1人だと思えるくらい存在が自然になる感じが、私はいい」
 言われてもよく分からないだろうけれど、私にしたら、口に出したことで意外に私のなかでのイメージが定まっていたのだなと驚いた。見ると、彼もまた驚いていた。
「ちゃんと考えていてくれているんだね、良かった」
 心底安心したような顔で言うので、私もなんだか安心した。でも、と彼はまた続ける。
「それであればもうゴールしていないかな。最初から僕ら、いつだってロイヤルミルクティを頼んでる」
 甘い湯気の立つカップを彼はコツン、と軽くぶつけて並べた。私は、どっちがどっちのカップか分からない1つを手に持って、小さく笑って口づける。
 熱くて、甘い。

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★著者:あにぃ


ちょっと今日のはまとまらなかったですね。。。反省

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