10月6日夢をかなえる日
私の名前には『亜』と言う文字がつく。亜矢香でも亜由美でも亜佐美でも何でも良いけれど、とにかく『亜』がつくのだ。
私は高校生から続けていた飲食店でアルバイトをしている。6年目を迎える今年、ありがたいことにバイト先で『1番優秀なアルバイト』として表彰された。
私は部活やサークルに入っていないので勉強以外で頑張れる場としてはアルバイトが大きく占めていた。だからこそ仕事はとても頑張っているし、自分なりに工夫をしたり、向上心を持っている。それが認められたのだと思い大いに喜んだ。従来から何かの1番になるという私の夢があったので、夢が叶った日となった。
1番になったからには自分の見る景色も変わっていくだろうと思った。けれど特にこれと言って変わるものはなかった。よく考えてみればそりゃそうだ。1番になったとは言っても、私の上には変わらずリーダーがいるし、憧れる先輩や社員さんもいる。1番になって夢が叶ったはずなんだけどなと少しもやもやした気持ちが出来てしまったが仕方ない。私は、1番になればそれですべての夢が叶ったものだと思っていたのだ。
いつだったか、バイト仲間で休憩中に雑談をしていた時、小学生の頃に出た宿題として自分の名前の意味を調べるというものがあると話題になった。
「うちはノリで決めたらしくてさ、宿題なのになんて発表すればいいのか悩んだよ」
「俺は母の好きだったアイドルの名前らしい。まじ困った」
小学生の思い出に加えて自分の名前の由来を思い出して、各々表情が明るくなった。悩んだとか困ったと言っていても、それは幼いいたずらっ子を憎めないでいるようなもので、結局はその背景にある、両親が自分の名前を決めてくれたという事実にやっぱり喜んでいるのだ。
私はこの時、自分の名前の由来や意味を知らなかった。皆の言うような宿題を出された記憶がない。いい機会だと思い母に聞いてみると、私の名前の『亜』には2番目という意味があると知った。
「えー、じゃあ私1番になれないってこと?」
母に聞くと、少し困ったように笑った。
「そうじゃないよ。いつまでも1番を目指せるように、だよ」
なるほど、そうか。
それを聞いて、自分でも不思議なことに、色々なことにすんなりと合点がいった。
1番をもらって夢が叶ったはずなのにもやもやが晴れなかったのも、その私の上には尊敬する先輩やリーダー、上司がたくさんいることも、そういう事かと思った。1番は私の上にたくさんいて、私は上を見続けるのだ。
「あなたにはずっと上を見ながら生きてほしいと思って。夢が叶ってそこで止まるのではなく、進み続けられるように」
今度は照れたように母は言う。でもその顔はどこか自信に満ちていて、私は安心した。
「それ、聞けてよかった。1番になって、夢が叶って、止まりかけてたよ」
私が言うと母は落ち着いた声で諭すように言った。
「1番になることも、夢を叶えることも、それがゴールじゃなくてスタートになってることって結構あるんじゃないかな」
2番が1番を目指すように、夢を叶える日は叶えた夢をスタートさせる日なのかもしれない。
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【今日の記念日】
10月6日 夢をかなえる日
10と6を「ドリーム」と詠む語呂合わせから千葉市に本社を置く、株式会社KUURAKUGROUPが制定した日。民間企業が若者の夢を叶えるためにバックアップする組織のバイトドリーマーズを設立し、この日に全国のアルバイトを対象とした伝説のアルバイト、優秀なアルバイト、アルバイト起業家などを表彰する予定。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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