10月25日ハンドメイドの日
お人形の服を作ってあげたいと、娘の春が言った。昨日、おもちゃ屋さんで着せ替え人形のコーナーを見た影響だろう。
買いたいではなく、作りたいと言ったことに少しだけ驚いた。彼女はもう間もなく4歳になる。色んなことが分からなくて、色んなことを知る年頃だ。だから、自分もお人形の服が作れるだろうと分かったのだと思う。でもそれはたとえば自分の服も作れるのだとまでは分かっていない気がして、柔らかい成長の途中を感じさせる。
私は妙に嬉しくなり、いいねと答えた。じゃあ、一緒に手作りしよう。
間もなく4歳とは言え、今は3歳だ。針と糸を使わせるのは早いだろうか。そう思って考えた苦肉の策が毛糸の編み針とフェルトであった。
「どうやるの」
どこか不安げにのぞき込む春に私は笑って見せる。
「ね、どうやろうかね」
正直、私も見切り発車である。多分いけるんじゃないかという一抹の・・・・・・希望。
「こうやって、穴あけパンチで穴を開けて」
10cm×25cmで切っておいた春の好きなピンク色のフェルトを半分に折り、輪になった部分に人形の頭が通るくらいの穴を切る。そこを上として、両サイドの下半分にそれぞれ4つずつ穴を開けた。
「春もパッチンしたい!」
「うーん、じゃあ一緒にね」
せぇの、と声を合わせてパチンと穴を開ける。安く買った薄いフェルトが役立った。厚みのあるものだときっと穴は開かない。その場合は事前にハサミで5mm位の十字でも入れておけばいいのか。うん、どうとでもなるな。
「ママ、次は次は」
急かすように顔を近づけ、その熱が私にも伝わる。私はごめんごめんなどと言いながら細めの編み針とこれもまた細い毛糸を手にした。
「今日はこれで縫いましょう」
「ちくちくする?痛い?」
まるでもう刺さってしまったかのように不安そうに聞く。私は大丈夫だと伝え、編み針を渡す。
「これは編み針だから、ほら、ちくちくしないから痛くない。でも、もっと小さくて細い針はやっぱり痛いから気をつけようね」
編み針を見せて私自身の指に先端を充てて教えると、春は真剣な顔でこくんと頷いた。
いつか、これが縫い針なのだと教えなくてはならない。もう少し先の未来を思い、私は楽しみになる。きっと教えてあげなくてはならないことは針だけではなくもっといろんなこと。できる事なら、その1つずつをこうやって一緒に経験して教えてあげられたらいい。
「じゃあ、縫っていこう」
パンチで開けた穴に、編み針に括った毛糸を縫い付けていく。私が少しお手本を見せ、同じように春が縫う。その顔は真剣で、本当に自分がお人形の服を作っているのだという自覚があるのだろうと思わせた。
縫い仕事はほんの僅かで終わった。
早速人形に着せてみると、少し丈が短かったかもしれないと気づき、私が少し眉を潜めると、春はまるで晴天のような笑顔で言う。
「すごい!上手に出来た!手作り、楽しいね。私が作ったのよ」
思わず私は春を抱きしめる。
材料が何で、どう作ってどんな出来だとしても、ハンドメイドは愛だ。
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【今日の記念日】
10月25日 ハンドメイドの日
子供から大人まで手作りの楽しさ、クラフト作品の良さを知ってもらうことを目的に、手作り・クラフトの総合情報検索サイト「手作り市場 あ~てぃすと」の運営、クラフトイベント、体験教室の企画運営をしている静岡県伊豆市に本拠を置く有限会社アドバンスネクストが制定。日付はハンドメイドは2つの手、10本の指を使って創ることから2月と10月に、そして「サンデー フォア クラフト」(クラフトのための日曜日)の言葉から、フォアを数字の4と見立てて第4日曜日としたもの。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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