3月13日お父さんの日
「私、大きくなったらパパのお嫁さんになるの」
私が小さな頃に本やテレビで良く見聞きした台詞の一つである。娘はみんな言うように聞いてきたのだが、はて、私はその当時に父にそんな台詞を言っただろうか。
「パパ嫌なの!」
2歳も後半になってようやくパパイヤ期が落ち着いてきたかと思わせた娘、杏であるが相変わらずツンデレの『ツン』は『ツン』なのであった。
「そんなこと言わないでよ、杏ちゃん。パパと遊ぼう!折り紙しよう」
折り紙や絵本、ぬりえを持ち出しては賢明に娘の気を引こうとする。けれどそのどれも杏のお眼鏡にはかなわないらしい。
「パパ嫌なの。やーめーて」
全くとりつく島もないのだった。
夫はやんわりと諦め、掃除でもしてくると言って2階に上がっていった。
夫が不憫でならない。
ただし、娘はちゃんとパパである夫のことが好きである。夫が仕事にでている日中には、一人遊びの中でパパが好きだとことあるごとに言っているのを私は知っている。
けれど直接顔を合わせるとどうにも『ツン』が過ぎるのだった。なぜだろう、嫌いなわけではないのに、嫌だという。けれどパパの何が嫌いなのかまでは言わないのだ。
もしかしたら、パパが好きだと言うことを上手く伝えられないのかもしれない。好きが上手く言えない、だから嫌になってしまうのか。
だったら私が教えてあげればいい。私は名案だと思い、早速杏のところへ行き、話をしてみることにした。
「杏はさ、パパの何が嫌いなの」
「パパ嫌なの」
やっぱり具体的な何かはないのだ。
ならば、具体的な何かを教えてあげればよいのではないだろうか。
「パパ、優しいよね」
私が言うと、杏はどこか照れるように小さく笑って頷いた。
「パパ、いつも杏ちゃんのこと大好きって言ってくれるね」
またもコクリと頷く。
「いつもお仕事頑張ってくれているし、お休みの日には杏ちゃんと遊んでくれるよね。だっこもしてくれるし、ブーンって飛行機もやってくれるよね」
少しずつその顔がにこりと緩み出す。小さな頷きの数が増えていく。
「公園で追いかけっこもするし、ブランコも滑り台もたくさんしてくれるよね」
「うん、いっぱいしてくれる」
なんだか私もいい気分になってきた。
「パパ、ママにも優しいんだよ。お掃除もしてくれるし、お洗濯も手伝ってくれる。ご飯のあとのお片づけや洗いものもしてくれるの」
私が意気揚々と夫の素敵なところを伝えると、今度は杏の眉間にしわが出てきた。
「だから、ママはパパのこと大好きなのよ。パパのお嫁さんでよかった♪」
私が極めつけを口にすると、杏はプンっと怒った顔を見せた。
「パパは杏のお嫁さんになるの!」
その台詞は本家と少し違うし意味も変わってくるのだが、気持ちは十分に通じる。そして私も杏と同じように夫を改めて想う。
「パパのお嫁さんはママなの」
私が応戦すると、杏も言い返す。
そしてその戸口に夫がにやりと笑っているのに気づくのはその数分後である。
子供もママも結局パパが好きなのだった。
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【今日の記念日】
3月13日 お父さんの日
毎日働いて一家の大黒柱として頑張っているお父さんに、月に1回、感謝の気持ちを表す日をと株式会社ヤクルト本社が制定。「人も地球も健康に」とコーポレートスローガンに掲げる同社の、お父さんが健康にとの願いが込められている。日付は13で「お父(10)さん(3)」の語呂合わせから毎月13日とした。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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