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6月25日 プリンの日

 とろける牛乳プリンが家で作れるのだと知って、私は嬉しくなり、急いでスマホで検索をした。サイトには既にたくさんのレシピが掲載されており、おそらくどれを作っても美味しいのだろうなと想像だけで満足しそうである。
 けれど私としては、作るなら1番おいしいだろうレシピを見て作りたい。と、言えばそのまま1番人気のレシピで作ると思われるだろうが、そこは私、検索ワードには『簡単』を足すのである。

 1番人気だけで検索したレシピと、『簡単』を入れて検索したレシピとでは、出てくるレシピがちがう。私はきっと美味しさよりも簡単さを求めているのかもしれない。

 出来るだけ、楽をしたい。疲れることをしたくない。もう平日は仕事だけで心身ともにくたくたなのだから、週末に作る食べたいプリンのレシピくらい優しいものがいい。

「なに、プリン作るのか?」

「ひっ」

 思わず出てしまった悲鳴に近い声。後ろを通ったのは私の苦手な上司であった。私は、まだ何も言われないのに慌てて立ち上がる。

「す、すみません!」

 でもでもでもでもでも!

 私はまだお昼休憩中である。それにレシピだってデスクのパソコンを使っているわけではなく、自分のスマホで検索しているのだ。文句を言われる筋合いはない。

「なんだ、昼休憩中だろう?」

 私はコクコクとそう言う人形のように頭を縦に振る。

 そう、でもも何も、上司はまだ何も言っていないのである。むしろ昼休憩であることを認識してくれていたのだった。

「自分が作るのか」

「あ、はい。まぁ」

 部長、なぜに立ち止まるのだ!早う部長席に戻ってください!なんて言えることもなく、頷いて私は背筋をピンと伸ばす。これ、無意識である。

「どのレシピ?」

 レシピを見ようと私のスマホに近づく上司に対し、私は思わずスマホをずらした。

「あ、すみません、えっと、このレシピでして、あの、」

 ページを変えるつもりだったのだと言うように慌ててスマホを操作する。すると上司が言う。

「スマン、むりやり見るつもりはない」

 そんなことを言って、何だったら少し頭も下げているようである。なぜここでそんなしおらしくなるのだ。

 だって、いつもはもっと横柄な態度で怒鳴り散らし(私にではないが)どちらかと言うとパワハラ寄りで、今だってほら、周りで同僚や先輩がハラハラと私達を見ている。

 彼は何がしたいのだろう。プリンを作るなど仕様もないとでも思っているのか。
 すると上司は自分のスマホを操作し、その画面を私に見せた。

「ほらこれ、『ペンタのプリン道』って検索してみてよ。先週末だったかな。とろける牛乳プリンのレシピが載っているんだ」

 言われるまま検索してページを出した。ざっと見て、材料も少ないし簡単そうである。

 なぜ彼がこんなレシピを知っているのだ。

「簡単だったし、家族に作ったら好評だったんだ」

 プリンが好きなんだ。そう言って妙に照れた顔でにこりと笑い、頑張れとまで声をかけてくれた。

 なんと!あの部長がプリンを作るというのか。私は気が抜けたのと同時にどこか胸が温かくなる。
 食べてもないのに、プリンは私の気持ちもとろかした。

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【今日の記念日】

6月25日 プリンの日

牛乳や加工乳、乳飲料、ヨーグルトなどの乳製品メーカーで、岡山県岡山市に本社を置くオハヨー乳業株式会社が制定。プリンの人気商品が多いことから制定したもので、日付は25を「プリンを食べると思わずニッコリ」の「ニッコリ」と読む語呂合わせから毎月25日とした。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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