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11月29日イーブックの日
天気が良くて、この季節にしては暖かい。
「少しゆっくりしておいで」
そう言って夫と2人の子どもたちはお昼前に送り出してくれた。ありがたくて、ちょっと泣ける。
さて何をしようかと、ひとまず駅までの道をゆっくりと真っ直ぐに歩く。今日は自転車は止めて歩くことにした。1人で歩くと言うことは、ちょろちょろと寄り道せずに真っ直ぐ思った方向へ歩ける。気持ちがなんだかくすぐったい。
どこかカフェにでも入ろう。そう思い、駅前にあるイートイン出来るパン屋さんに入った。
「あっ!触っちゃだめ!」
少し前にいる親子の母だろう女性が慌てて子供の手を取るも、既に子はそのパンを掴んでいた。それがまた激辛カレーパンだったものだから、女性は困った顔をして自分のトレーに入れた。
そうか、私は今、これをしなくていいのか。
そう思えばなんと自由なことだろう。うきうきする心を抑えつつ、女性にファイト!と心の中で声を掛けてパンを選ぶ。取り分ける子供がいないので、今日は激辛カレーパンだって選べるのだ。辛いものは苦手なので選ばないけれど。
アップルクリームパンとホットカフェオレを注文し、店の奥のひとり席に座った。おしぼりで手を拭き、カフェオレの湯気を鼻で吸い込みつつ、一口すする。ほぅっと全身から息を吐いた。じんわりと幸せを噛みしめる。あぁ、でもこの幸せは、いつもの日常があってこそ感じられる幸せなのだ。バタバタと忙しなく過ぎる日常幸せもバタバタと過ぎてしまいそう。
そう言えば、昔母にもらった本にもそんな時の流れの物語が描かれていた。あれは何という本だっただろう。
しまったな、と私は思う。先に書店に寄るべきだった。例えば表紙を見たら思い出すかもしれない。そうでなくても今日はここでじっくり読書がしたい気分、と言うかそんな雰囲気だったから何か読みたいものを見つけられたかもしれない。
て、手持ち無沙汰だ。
時間を見ようとスマホを取り出す。今の時間にネットサーフィンなどもったいなくて出来ない。と、検索すればいいと思い立った。
時間どろぼう、女の子、本。
母にもらった本について思い立った言葉を並び立てる。ああ、そうだ、ベッポじいさん。
検索をかければすぐに出た。あぁ、なぜこれを忘れてしまっていたのだろう。有名な物語だ。聞けばほとんどの人が知っているのではないか。これこれ!
……これ、電子書籍で読めるのか!!
検索をかけ、その近くのサイトを漁ると電子書籍で読めることが分かった。
書店に行かずとも今、この幸せな時間にこの本が読めるのか!私は喜び、電子書籍で購入すべく、サイトを閲覧する。
あ、これも電子書籍で読める。あ、これも読みたかった本。品揃えの多さに私は驚き、色んな本を検索した。その殆どが電子書籍で読めることに感動する。古い本でも、だ。そして検索をかけるたび、読みたい本が見つかる。私の中の幸福な時間を彩るのは物語なのだなと改めて思う。
これまでに読んだ本をもう一度読んで、またあの頃に戻ろう。母がくれた本を、母になった私がもう一度読もう。
そして母が私にそうしてくれたように、いつか子どもたちにも教えてあげよう。
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【今日の記念日】
11月29日 イーブックの日
本には人生をも変えてしまうような不思議な力があり、子どもの頃に読んだ懐かしい本も電子書籍なら手元で探せる。さまざまな可能性のある電子書籍を通して本を読む人が増えて欲しいとの願いを込めて、国内最大級の電子書籍販売サイト「ebookjapan(イーブックジャパン)」を運営する株式会社イーブックイニシアティブジャパンが制定。日付は11と29を「いい、ブック」と読み、いい本をたくさん読んでもらうきっかけの日にとの思いと、イーブックジャパンのサイト名の語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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