2月16日似合う色の日
バイオレット、パープル、どっちでも良いけれど、私は紫が好き。
財布は黒に近い紫で、ボールペンの軸も紫。ハンカチは薄めの紫で、傘も同じような色、スマホもイヤフォンもタブレット(これはカバーだけだけど)も紫色。
でも、私は紫の服を着ない。
紫は二面性がある色だと思う。それだけに人によって好きと嫌いが分かれているように感じる。紫の二面性とは例えば「高貴と下品」「神秘と不安」と言う感じ。そらそうだろう、青と赤と言う全く違う色を混ぜている。その割合によって紫の色具合も変わるのだ。つまり、二面性もその割合で感じ方が変わるのではないか。そう思うと安易に紫を着ることが出来ないのだった。
と、言うより単純に以前に着た紫のワンピースが似合わなくて、カラー診断してみたら、見事に避けるべき色と知った。
「あ、ねぇねぇ。これ似合うよ」
同僚の吉田聖が通り掛かったアパレル店のマネキンを見て足を止め、私に言う。客先訪問の帰り道、予定より随分と早く終わって2人とも少しだけ気持ちが浮いていた。
「そ、そうかな」
私は満更でもない返事をした。よく見るとマネキンの着ているトップスは赤でもなく青でもなく、紫色だった。
「河野さん、似合うと思うんだよね」
彼もマネキンに近寄り、そっと袖口を取る。私に似合うと言っているくせに、その袖口を指で軽く持って自分の腕に合わせた。
「ほら綺麗な色。河野さん、紫好きだよね」
「え、何で知っているの?」
私が驚いて聞くと、彼もまたわずかに驚いて見せた。
「そんなに紫色の小物をたくさん持っておいて気づいていないとでも?」
そう言って笑い、試着してみたらどうかと私に勧めてくる。
「えー、でも私、紫を着るのは苦手なんだよ」
「そうなの?でもこれは似合うと思うよ。着てみたらいいじゃん」
と彼は店員さんを呼び、試着を申し出た。渋々私が試着室に入る間際、彼はポツリと言った。
「私もこの色のワンピース持ってるけどいい色だよね」
一瞬聞き違いかと思ったが、確かにワンピースと彼は言った。少し困惑しつつ試着する。鏡を見て驚いた。
「どうどう?」
彼が聞き、私はそっとカーテンを開ける。
「あ、すごい良い。思った以上に似合ってる」
そうなのだ。自分でも驚くほどしっくりきている。以前着た紫のワンピースは濃い紫色だったけれど、このトップスは淡い紫色だからだろうか。それも少し青に寄せた紫。
「一概に紫が駄目なんじゃなくて、濃い紫が合わないだけで、淡い紫はとても似合っている。濃淡で違うんじゃないの?」
彼はそう言い、店員さんもよく似合っていると微笑んでくれた。濃淡、か。
「色なんて○か☓の2択じゃないんだから。薄い濃いもあるし、紫なら青寄り赤寄りもあるでしょう。僕みたいに男性と女性の中間ってのもあるしね」
「あ、やっぱり」
思わず口に出てしまい、慌てて口を押さえた。彼は笑う。
「濃かろうが、薄かろうが、気に入って似合っていれば、僕のような中間でもいいんだよ。それで本人が幸せなんだから」
好きな紫を着てもいいのか。そう思うと急に胸の中にワクワクと何か湧き上がる。
とりあえず、週末は彼女にワンピースを借りようと思う。
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【今日の記念日】
2月16日 似合う色の日
兵庫県神戸市に事務局を置き、「グラデーションカラースケール®」で、一人ひとりに本当に似合うパーソナルカラー診断を提供している一般社団法人日本パーソナルファッションカラーリスト協会(JPFCA)が制定。「グラデーションカラースケール®」の認知度を高めるとともに、カラーリストのスキルの向上が目的。似合う色を身につけることで「心豊かに人生を満喫できるように」との願いが込められている。日付は2と16で「似(2)合う色(16)」の語呂合わせから。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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