11月13日お父さんの日
「おはよう、杏ちゃん♡」
「やーめーて!パパいや!」
朝一番の挨拶がこれである。2歳になってまもなく半年を迎える娘の杏は、口が達者になるにつれてパパイヤ期も佳境に入っているようだ。
「どんまい、パパ」
私は毎朝の変わらぬ光景にも関わらず、今日も笑いながらパパである夫を励ます。夫は悲しそうな顔をして、いつものことだからと笑う。そんな顔も見ないで杏は一目散に私の元へ向かってくる。
「ママすき!」
夫が不憫で仕方ない。
どうしたって今はパパよりもママといる時間の方が長いため、身近と感じるのはママになってしまうのだろう。けれど私は日中一緒にいる時間が長い分、やはり杏を怒る時だってある。それを受けて、怒るママが嫌い!になるなら分かる。けれど全く怒らずにただただ寵愛しているパパを嫌いになるのは何故なのだ。
日々不思議に思っているのだが、最近はそれを上回る不思議も出てきた。
「パパだいすき!」
残念ながらこの場にパパはいない。杏が言うのは日中、パパが不在の時限定なのだった。例えばおままごとを私と二人でしているとき。
「はい、ごはんよー」
杏がにこにこと私の目の前におもちゃのご飯セットを出してくれるので、私がいただきますと食べる真似を始めると、急に止められる。
「だめ!これパパの!パパだいすきの」
その通り、見ればパパの好きなハンバーグである。
またある時は私が食事の準備をしていて、彼女がおもちゃ部屋で遊んでいるとき。一人で熱中している様をこっそり覗いてみる。
「はぁい、ねんねしてね、パパ。いいこね。だいすきよー」
そう言ってお気に入りのゾウさんのぬいぐるみに話しかけながら、そのお腹でぽんぽんと優しくリズムを取るのだった。
他にもパパがいないときにパパ大好き!するエピソードはたくさんあり、七不思議どころではなくなったので、私は動画を撮ることにした。
おやつを食べる時。
「これはパパのぶんー」
(と、あの乳酸菌飲料を取り分けてくれるが、最終的には自分で飲んでしまう)
お人形を持ってお散歩する時。
「パパ、くっくはいてね、あんといっしょにおさんぽねー」
お絵描きをしているとき。
「これがパパでー、これがあんちゃん!」
見ていて可愛いが、なぜ夫がいないときばかりなのかとやはり泣けてくる。パパをお世話する相手にして可愛がっているようだが、何故実物には冷たい態度をとるのか。やはり不思議である。
このようないくつかの動画を1週間、撮り溜めた。驚くことにそれらは優に1時間を超える。パパの知らないところで実はこんなにも愛されている事を知ればどんなに喜ぶだろう。想像は容易い。
編集するのに随分と苦労したが、娘を愛する夫のためにと5本の動画を作成した。これで月から金の1週間、毎日違う動画を見て癒されることだろう。
早速1本目を、本日娘がお昼寝中に夫に送ってみた。杏が描いた夫の似顔絵も一緒に。すぐに既読がついた。
「なにこれ、可愛すぎる」
その一文と同時にうれし涙を流すスタンプが送られてきた。きっとこのスタンプのままの表情をしていることだろう。会社で変に思われないだろうかと思いながら、私も嬉しくなった。
「いつもお仕事してくれてありがとう、大好きよ。杏より」
ついでに私の名前も添えて。
いつだって、ホントはみんなパパが大好きなのだ。
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【今日の記念日】
11月13日 お父さんの日
毎日働いて一家の大黒柱として頑張っているお父さんに、月に1回、感謝の気持ちを表す日をと株式会社ヤクルト本社が制定。「人も地球も健康に」とコーポレートスローガンに掲げる同社の、お父さんが健康にとの願いが込められている。日付は13で「お父(10)さん(3)」の語呂合わせから毎月13日とした
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。
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