8月24日 ブルボン·プチの日
ごめんねと言って、彼女が私に手渡したのはプチシリーズだった。私の好きなしっとりチョコと彼女の好きなキャラメルクッキー。
昨日、彼女と喧嘩をした。きっかけは私が彼女の連絡を取り損ねたこと。昨日から泊まりがけの会社研修があった。久々に同期で集まることもできたので、良い機会だったと思う。ただ、去年や一昨年までの集まりと違って、懇親会や飲み会を開くことができなかったのは寂しいものである。けれど、各自部屋でのオンライン飲み会だけは許されており、専用アプリ環境は整えられていたので、それを利用した。
何人かのグループで繋がり、飲み会を行った。その最中、私は彼女から連絡が来ていたことに気づかなかったのだ。研修中はスマホをマナーモードにしていたためである。スマホを手に取った時にはすでに着信が5件来ていた。私は慌ててオンライン飲み会を退室し、彼女に電話を掛けた。
彼女は怒っていた。
「何で無視するの」
マナーモードにしていて気づかなかったのだと言ってもなかなか納得せず、彼女は怒っていた。自分を無視して仲間と楽しく遊んでいたのだろう、気になる人もいるのではないかとも思っているようである。同じ問答を繰り返し、最終的に彼女が言う。
「やっぱり、同性だと難しいのかな」
彼女と私は女性同士の恋人である。きっかけはよく行く雑貨屋さんでの出会いであり、彼女から告白され、付き合って1年ほどである。
彼女はそれまで女性としか付き合ったことがなく、一方の私は男性としか付き合ったことがなかった。そのせいか、彼女は私を心配している。本当はやっぱり男性の方が良いのではないか、女性同士は難しいのではないか。そう考えることが増え、時々喧嘩をすると彼女は言うのだ。
やっぱり同性では私にとって難しいのかと。
そうではない。
同性か異性か、同性と付き合うことが初めてか経験者か、そのどれも関係がない。一緒にいることに必要なのは愛情と信頼である。心配よりもその2つを私に想っていて欲しいと私が訴えるとようやく彼女も納得してくれた。
そうして翌日の今日、帰宅すると、彼女がプチシリーズを用意して待っていた。
「紅茶入れたよ」
「ありがとう。高見の入れてくれる紅茶はとても美味しい」
私は紅茶をもらい、皿の上にもらったおやつをそれぞれ並べた。小さなクッキーがきれいに並ぶ様はとてもかわいらしい。私はしっとりチョコを口に入れた。一口でポイッと入るところも大好きだ。
「ごめんね、時々急に不安になってしまって」
「うん、分かってる。だからさ、その都度、二人で話そう。不安が生まれたら信頼を作ろう。また不安が生まれたらまた信頼を。そうやって少しずつ塗り重ねていければ良いな」
私がそう言うと、彼女は小さく笑う。彼女の伏し目がちな長いまつげの目が好きだ。
「しっとりチョコとキャラメルクッキーを交互に並べていくみたいにしよう。一つずつ、順番に」
その目が私を見る。私は図らずも少し照れてしまう。2つ並んだプチを同時に取る。味が絡まってこれはこれで美味しい。
「順番じゃなくても、2つずつ一緒に進めばいいよ」
彼女とプチと紅茶と私。
穏やかな時間がずっと続くと良い。
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【今日の記念日】
8月24日 ブルボン·プチの日
新潟県柏崎市に本社を置き、数多くの人気菓子を製造販売する株式会社ブルボンが制定。同社が1996年から販売する「プチシリーズ」は手軽に食べられる大きさのビスケットや米菓、スナック類など24種類。そのバラエティ豊かな品揃えと、色とりどりの細長いパッケージで人気の「プチシリーズ」をさらに多くの人に楽しんでもらうのが目的。日付は24種類にちなんで毎月24日に。同社は「ブルボン・プチの日」の愛称を「プチの日」としている。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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