9月24日 ブルボン・プチの日
「もうこれでラストか・・・・・・」
男はため息をつく。それは悲しいような、安堵したようなため息であり、やや重たいものだった。
かれこれ1年が経過した。いままでその存在はもちろん知っていたし、口にしたこともあった。けれどその種類がどれだけあって、新しい味ももちろんあって、常時24種類が販売されていることなど、そんなところまでは男も知らなかったのだ。
去年のちょうど今頃にたまたまお客さんにもらった、ブルボン・プチの「えんどうまめうすしお味」を口にして以来、全部食べようと思ったのが始まりである。
「ブルボン・プチシリーズを食べ尽くす」
ここから1年の戦い、もとい楽しみが始まったのだ。
現在25歳の男は、金持ちな訳ではないが、リーズナブルな価格のブルボン・プチを大人買い出来る程度には大人である。けれどそこはぐっと我慢した。『楽しみはじっくりと』をモットーにしていることもあり、月に2本ずつを賞味することにしたのだ。そして先月まででそれも22種類完了し、今日で残る2本、これで24種類コンプリートである。
『プチ黒糖きなこウエハース』
『プチポテトわさび味』
意識したわけではないが、偶然に和風味のそれらがラストを飾ることになった。
思えば和洋さまざまな味があったものだ。
えんどうまめに始まり、定番のチョコチップも安定の美味しさだった、プチえびは祖母も好物だったし、プチいちごビスケットは妹に分けてあげると大好きだと大いに喜んでくれた。
会社の同僚と食べたこともある。休憩室でアーモンドサブレとキャラメルクッキーを食べていると、今までほとんど話したことのない同僚が声をかけてくれたのだ。そうして彼もまた「これ、好きなんだ」と言うのだった。
そう、この1年で誰かと食べたプチはその誰かの好物たちだったのだ。それだけ、浸透しているのだと驚いたものだ。
これだけ種類があるのだ。この種類の数だけこの味が好き!と言う人がいる。好みの幅をこれほど広げて受け止めてくれるプチはすばらしいものだ。思わず男は感心していた。
さて、感慨もひとしお、家に帰って最後のプチ食会をしようか。そう思い、袋から出していたパッケージを手に取った。
「おや、プチシリーズですね」
店主が話しかけてきた。おしゃれなアンティーク調の丸メガネのご老人。
「ええ」
「こちらで開けて食べていただいてもよろしいですよ」
「え」
これまでの男の様子を見ていたのだろうか。名残惜しいような愛しいような、プチを眺める男の表情を。店主はにこりと笑い、再び口を開く。
「これにはコーヒーも良いですが、ここは日本茶でも入れましょうかね」
確かに、黒糖きなことわさび味である。日本茶と合わせたい気持ちもある。でもこんな喫茶店の中で・・・・・・。
「今日は他にお客様もいませんからね。どうぞ、ごゆっくりください。ああ、お皿も出しましょう」
至れり尽くせりである。そして男は気づく。なるほど、そう言うことか、と。
「よかったら、一緒に食べませんか」
男がそう言うと、店主はどこか気恥ずかしいような顔を見せ、ありがとうと微笑んだ。
ブルボン・プチはその種類の数だけ新しい縁を味わわせてくれる。
それはきっとこれからもずっと。
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【今日の記念日】
9月24日 ブルボン・プチの日
新潟県柏崎市に本社を置き、数多くの人気菓子を製造販売する株式会社ブルボンが制定。同社が1996年から販売する「プチシリーズ」は手軽に食べられる大きさのビスケットや米菓、スナック類など24種類。そのバラエティ豊かな品揃えと、色とりどりの細長いパッケージで人気の「プチシリーズ」をさらに多くの人に楽しんでもらうのが目的。日付は24種類にちなんで毎月24日に。同社は「ブルボン・プチの日」の愛称を「プチの日」としている。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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