2月1日2分の1成人式の日
「成人式って大人のお祝いなの?」
夕飯時、先月10歳になったばかりの晴海が言った。
「そうだよ。20歳の大人になって、成人になった人たちをお祝いする日だよ」
「じゃあ19歳は?」
「え」
思いがけない年齢が出てきて、私の箸は止まった。言葉に窮する。
「19歳か」
ごまかすように復唱し勢い夕飯のコロッケを口にした。サクサクとまだほろ温いそれはとてもおいしい。
「成人になるまではずっと子供で20歳になった瞬間に大人に変わるの?例えば今日が誕生日だとして昨日までは19歳で子供だったのに、今日20歳になったら急に成人だ大人だって言われていったい何が変わるの?」
言葉に詰まってしまったのは、口に含んだコロッケが大きすぎたわけでもないし、飲んだお茶が喉の変なところに入った訳でもない。
晴海は、彼女はもうこんなことを考えるようになったのかと妙に成長を感じたからである。
晴海の言うことはよく分かる。確かにそうだ。20歳になった瞬間に例えば身長が伸びたりはしないし、分からなかったことがすっきりクリアに分かるようになる訳がない。では一体何が変わるだろう。私はハムカツを取り、自分の皿に移しながら答える。
「人として、20歳になったからって変わるわけではないよ。だって20歳の成人って、国が決めたルールなだけだからね。ああ、でも例えば法律が適用される幅や種類はめちゃくちゃ増えると思う」
私が言うと、彼女も納得するように頷いている。成年と未成年の違いね、そう妻が言う。
「考えや態度が成熟している人のことを大人と言うんだけれど、今までそうじゃなかった人が急に次の日になったら、とか0時を回ったらとかそんなところで激変しないよね」
気づくと晴海はハムカツを食べていた。頷きながら一応聞いてくれているようだ。
「多分、成人になるってことは大人に向かう入り口に立ったってことじゃないかと、パパは思っている」
「入り口?」
「そう。だから世の中のルール上で20歳は成人だけれど、正確には成人は大人ではない。大人の入り口の人。ちなみにパパも大人になりきったかと言われるとそれはわからない」
そう言うと、少し困ったように顔を上げた。
「きっと大人はずっと大人を目指して成長していくんだよ。そして、子供も子供でまずは大人の入り口に向けて成長を続けている。晴海の今回の疑問も成長の証の一つだと思うよ」
「私はまだ10歳だよ」
彼女は今度はコロッケを取った。
「そうだね、20歳の半分、2分の1成人だね。つまり子供としての成長の折り返し地点だ」
そう言うと晴海はわかったようなわからないような顔をしてコロッケにパクついた。
わからなくてもいいよ。私は彼女の顔を見て思う。10歳という2分の1の成人になった君は大人になるに向けた準備を半分終えたようなもの。それは相当な成長なはずだ。そしてありがたいことにその成長をパパもママも手伝わせてもらっているんだ。それももうあと半分かと思うと、それこそ急に寂しく感じる。写真館でも行って記念にしなくてはと気付く。
10年後、成人してからの大人を目指した成長は君一人の力で遂げるんだ。だからそれまでのあと10年はまだもう少し親として手伝いをさせて欲しいな。
そんなことを思っていると、私の分のハムカツも食べられてしまった。
たくさん食べてすくすく育ってください。
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【今日の記念日】
2月1日 2分の1成人式の日
大阪府大阪市に本社を置き、こども専門の写真スタジオを全国展開する株式会社スタジオアリスが制定。成人となる20歳の半分の10歳は「自分が生まれてきたことへの感謝と将来の夢」について考える時期。その節目に、こどもの成長を振り返る大切な日として「2分の1成人式」を広めるのが目的。日付は2と1で「2分の1」を表している。
記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
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