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昨日よりもおいしい一日に

朝起きたら、狭いバルコニーにあるプランターの中でちょこんと出ていた、小さな小さなほうれん草の芽。

それは小指くらいの本当に小さな緑色の芽で、でも頑張って重たい土を押し上げて出てきたんだろうなと思うと、小ささの中に力強さも感じた。

それからというもの、毎朝起きたら小さな芽たちに水をあげることが日課になった。

最近寒くなってきてベットから出るのがおっくうになっても、「今日はあの子たち、どれくらい身長伸びたかな?」って気になってしまって、自然とくるまっていた毛布の中から出てしまう。

水を上げながら、「お、今日はまた大きくなったね」なんて心の中で声をかけてみる。

まるで小学校の身体測定みたい。

...

そういえば、身体測定の時はいつも身長を友達と比べ合ってたな。「◯cm伸びてた!」「去年と全然変わってなかった…」なんて言い合いながら。

でもきっとほうれん草の芽たちは、自分が他の芽とどれくらい違うのかなんて全く気にしないんだろうな。

昨日の自分からどれくらい成長したのか、今日の自分はどれくらい伸びられるのか。肩の力を入れずに(そもそも芽に肩なんてないけれど)マイペースに伸びているんだろう。

「周りと比べる必要はないでしょ?だって最後においしいほうれん草になればいいんだから」

そんなことを言われた気がした。

きっと私も、昨日よりもおいしい一日が過ごせる人生を送ればそれでいいのかもしれない。そして、そこに周りを気にする必要性は少しもない。

...

寒い季節がやってきたのに、そんなのにも負けずにしゃんとしている芽たちを、寒すぎてすぐに身が縮こまって猫背になってしまう私は見習わないといけないな、と自分を奮い立たせながらバルコニーの引き戸を閉める。

明日はみんなどれくらい伸びているかな。



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