棒読みの可能性 ー気まぐれPEANUTS Analysisー
思いつきで始める、自他ともに認めるPEANUTS好きがお送りする気まぐれPEANUTS分析。
取り上げる作品はこちら(かっこ内は作者の心のツッコミです。)
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(チャールズ・M・シュルツ. 2020.『完全版 ピーナッツ全集2 スヌーピー 1953~1954』. 谷川俊太郎訳.河出書房新社. p4.)
Lucy: Will you read me this story, Charlie Brown?
Charlie Brown(以下C): What?! Oh, great scott!! Why do you always bother me?
(とか言いつつ、ちゃんとLucyに絵本を読んであげるCharlie Brown。言葉とは裏腹に彼の優しさが垣間見えます(笑))
C:Onceupontimetherewerethreebearsandtheywentforawalkinthewoodsandagirlcamealongand
(……?!?!?!)
C: Shefeelasleepinthelittlebear'sbedandwhenthethreebearscamehomethegirlranaway! The end!!
(…な、長いぞ!Charlie Brown!!!ここで、タイピングに手こずるセリフをかましてくれました。)
Lucy: Thanks for nothing!
(まあそうなりますよね…^^;)
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この作品で注目したいのは、なんといっても2、3コマ目のCharlie Brownのセリフだろう。
読者泣かせの文字の羅列。長々と文字を連ねる文章を読者はわざわざ読みたいと思うだろうか。少なくとも私は一言一句読む気は起こらなかった(笑)
つまり、作者はそもそも読者にCharlie Brownのセリフを読んでもらおうとは思っていなかったのではないか。「彼が何の物語を読んでいるか」よりも、「面倒くさい読み聞かせをできるだけ早く終わらせたいという彼の気持ち」にフォーカスしてもらいたかったのではないか。
だから、Charlie Brownのセリフの読み方に特徴を持たせた。
では、彼の読み方の特徴とはなんだろうか。
普通英語の文は、単語と単語の間に一定の間隔を空ける。The_girl_went_to_the_park.の"_"部分みたいに。
しかしCharlie Brownは、その規則をものの見事に破っている。かなり読みづらいセリフ文になっている。なんだか、棒読みをしている彼の声が聞こえてきそう…。
そう、彼のここでの読み方の特徴は『棒読みに聞こえる』ことなのである。
なぜ単語同士の間にスペースがなければ、棒読みしているように見える(聞こえる)のか?
試しに、2、3コマ目のCharlie Brownのセリフを声に出して読んでみてほしい。
息つく暇もないセリフであることが実感できるのではないだろうか。(というか、どこかで絶対息つぎしないと酸欠になる…!!!どうやってこのセリフを読んだんだCharlie Brown…)
つまり、
・文字が連なると息づきするところがなくなる
↓
・次から次に文字を読むため、抑揚を付けづらい=感情を入れづらい
↓
・結果、棒読みのようになってしまう(聞こえてしまう)。
今までの経験から、一気に読むと感情が込められないことを私たちは無意識のうちに理解している。だから、2、3コマ目のCharlie Brownのセリフを見ただけで、彼が感情をまるで込めずに棒読みしていると理解できるのではないか。
そう考えると、単語と単語の間のスペースって大事なんだな…。スペースさん、いつもありがとうございます(_ _)笑
もう一点。頑張ってCharlie Brownのセリフを読んでみると分かることがある。(興味のある方は解読してみてほしい)
3頭のくまが散歩に出かけた→1人の女の子が登場→眠くなったから女の子はくまのベットで眠った(いきなり?!)→3頭が帰ってきたので女の子は慌てて逃げ去った→The End
…なんと簡潔にまとめられた物語であろうか。
ちなみにこの物語は実際にあって、Goldilocks and the Three Bears(またはThe Story of Three Bears)が、Lucyの読んでもらった作品であると思われる。
しかもこの物語の中で女の子は、くまのベットで寝た(それだけでも大した度胸なのだけれど…)だけではなく、彼らの家に無断侵入して、3頭のスープを全てたいらげ、小ぐまの椅子に座って壊しちゃうという、なかなか破茶滅茶なことをしでかしている。(くまサイズのスープを全部飲み干して、小ぐまの椅子を壊すって、一体どれだけたくましい女の子なんだろう…)
話は逸れたが、何が言いたいかというと、Lucyが読み聞かせをお願いした物語は、まあまあな長さのお話であるということである。とても2コマで話終わるような長さではない。
それを2コマで完結させてしまったCharlie Brownの4歳児らしからぬ要約力を褒めたいところだが(この年代に描かれたCharlie Brownは4歳という設定だった)、別の見方をすれば、ここでも彼が読み聞かせを早く終わらせたいと考えていることがうかがえるのである。
極め付けの"The end!!"(しかも太字!)は「はいおしまい!!」と有無を言わさず物語を締め括ろうとしている彼の努力も見られる。(どんな努力だ…)
4コマ目に「この役立たず!」と嫌味を言うLucyと、怒る彼女をよそに、罪悪感ゼロで何事もなかったように悠々と去っていくCharlie Brownとの対比が、この作品を締めるポイントにもなっている。
それにしても棒読みって、人を黙らせる力が秘められているのだろうか…。
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