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プリンセス講座


これは2023年の11月のお話です。


新宿でお友達と遊びました。
女2人男1人の3人組で
LINEの名前は「赤パンダ隊」


大学時代からの友達で、
卒業して10年経った今でも仲が良く
女の子の1人が結婚して子供を産んだので、
ここ数年の遊び方はほぼピクニック。
大体新宿御苑でしています。

春1回、秋1回くらいのペースが多い。
大体私が「来月ピクニックしよ」
と召集をかけるのだけれど、
もし遊びに誘いたい季節が
ピクニック向きじゃない場合は、
カラオケの個室でご飯を食べます。


カラオケの個室は本当にありがたい。
子供がいても周りに気を使わず
好きに騒がせらるし、
ご飯も飲み物も食べられる。

踊ったりしてもいいし、
会話の合間に
好きなアイドルのMVを見たりもできる。

何なら、マイクで歌ってもいいし、しかも
歌うための音源を流してくれる機械もある。

こんな「殆ど」
を提供してくれる空間は中々ない。
コロナ禍なんて本当にお世話になった。

コロナは怖いし周りの目もあるけど
それでも友達には会いたいから、
困ったらとりあえずカラオケに入った。


今回は季節的に、
モロピクニック狙いの召集をかけたのですが
11月中旬、日本に最強寒波の到来。

「大丈夫かな?」と数日前に話していたら、
当日は案の定激サムDAY。
寒波期間の中で1番の寒い日でした。

当日に急遽新宿のパセラ集合に変更。
当日に「雨だ、どうしよう」と
狼狽えることも何度かあった私たちは
ピクニックの予定の日は
必ずカラオケパセラの予約も取るのです。
というより、しっかりものの1人が
必ず予約しておいてくれるのです。
なので今回もパセラのお世話になりました。

元々腹痛持ちで
過敏性腸症候群であるとここ数年で判明した私
この寒波でもポンポンペインになり、
予定していた出発時間は遅れてしまった。
赤パンダのLINEに
「ごめんなさいポンポンペインで遅れます」
と連絡する。
優しい友達は「気をつけてね」と返事をくれる。


その上新宿駅ラビリンスから脱出できず
小田急線で新宿に来た私は、
パセラのある東口に全然出られない。


今までは
小田急線が得意の南口から東口に歩いていたけど
新宿に初めて訪れてから20年以上立つだろうに
こんな事をしているのは
阿呆かもと思い始めたので
最近は頑張って東口から出るようにしている。

何回やっても慣れないし、少し戸惑う。
今回も確かめるように歩きながら
改札を出ると、エラー

ピコーン。

駅員さんに聞くと、
小田急線からJRの乗り換え改札に
来てしまったという。

確か小田急線から東口に出るには、
JR側に向かって改札を出るはずなのに、
小田急線に戻れという。

それでは南口からしか出られないじゃないか。
赤パンダのLINEに
「もう出れないのかもしれません」と連絡。
とりあえず小田急線に戻ってみる。

さっきと同じ方向には行けないから、
もう一つのJRっぽい方に向かってる。
改札を出る。エラー

ピコーン。

駅員さん曰く
「JRへの入場履歴がある」という。

小田急線できたけれど、
間違えてJRに入り込んだらしい事を説明する。
「JRに乗りたいのか」と気かれる。 

いいえ、
もうこの新宿駅ラビリンスを出たいのです。
できれば東口から。


改札は出してもらえ、しかも東口方面にこれた。
見覚えがある。出口をでたらアルタ前だ。
いそいそと歩き、出口を探す。
なんか最近色々変わってどれを出たら
アルタ正面の出口だったかわからない。
でも友達を待たせ過ぎているから、
もういいやと出てしまう。

LINEに通知がくる、「がんばれ~!」 
先にパセラにいる友達からの激励。

出口を出て顔を上げると、私は南口にいた。
東口まで歩いてパセラに行った。



新宿パセラも二つある。
いつも予約の取れた方に行く。
今回どっちなのかわからなくなり
記憶をたどり連絡する。

「ミスドの近くの方だっけ?」

確かミスドを曲がったところに
パセラがあったはず。
「そう!新宿靖国通り店!いつものところ!」
友達からのLINE。


よしよし、
とドンキを超えてゴジラを横目にぐんぐん歩く
ミスドはちょっと先なはず。
するとパセラを通り過ぎた。

ん?まだミスドは通っていない。

もう一個のパセラはここだったか。
一応地図アプリを見て
この目の前のパセラを指してみる。

店名が書いてある。

「パセラ 新宿靖国通り店」

大混乱である。

ミスドの近くのパセラはまだ先のはず。
連絡をくれた友達は、
私と違ってしっかりしている。
パセラの予約だっていつもしてくれるし、、、


30秒だけ考えて、「ここだな」と9割確信。
予約してくれた人ってのは、
店名をその日明確に覚えている可能性が高いし
ミスドも確かに近いっちゃ近い。
てかパセラの2店舗近くにあるから
どっちも「ミスドの近く」で間違いではない。



というか、
毎回この店舗使ってた気しかしなくなってきた。
言われた部屋の階まで行ってみて、
部屋を覗いたら、友達がいた。
無事に合流。
今日1日はもうこれでほぼクリア。



友達の子供がまた少し大きくなっていた。
結んだツインテールの長さが変わって
少し前に記憶していたシルエットと違う。

「髪伸びたのね~~~~」と話しかけて、

「ほら、おはようあんなちゃん」

お母さんに言われたままを繰り返した

「おはよう、、あんなちゃん、、」

と、消え入りそうな声で挨拶をもらう。


今は2歳。
絶賛プリンセス大好き時期に
差し掛かったらしい。

そして私たちはご飯を食べたり、
韓国旅行のお土産を渡したり、
テレビ繋げたYouTube動画を見たりし始める。

友達の男の子は、
ここ数年ズッポリNiziuファン。
初めての「推し活」に目覚めて、
ちょっと怖いくらい
コンサートに通ったりしている。

コンサートの写真を前に見せてもらったら
両手に推し「マコ」の
全く同じうちわを2つ持っていた。

なぜ二つなのか聞いたら、
なんか勢いで買ってしまい
特に理由はないらしい。


冬に誘われて
京セラドームのコンサートに同行したら、
ペンライトも持つからと、
うちわ二つが邪魔だと嘆いていた。

Niziuが念願の韓国デビューを果たしたので、
友達はここ最近大忙し。
初めて知る「韓国アイドル」の応援の仕方や、
出演するテレビ番組のチェック。
その番組を見る方法や、
アイドル同士の競争ランキングの投票方法、
韓国のCDを買う方法や、
それを
アイドルの成績に反映させるための店舗選び。
わからない事だらけの事を
楽しみながら勉強して覚えている。

CDを複数買ったから〜と、
今日は私たち2人にも
CDをプレゼントしてくれた。

みんなでCDの特典を見たり、
韓国のCDのクオリティの高さや
写真のビジュアル、構成などを褒める。

そして韓国の音楽番組の動画を見たり、
それぞれの推しだけをメインで写した
韓国特有の音楽番組の
メンバー別アングルの動画を見る。


子供はご飯を食べながら、
たまに音楽に合わせて踊ったりしていた。

子供が飽きないように、
時々ディズニープリンセスの動画を見せる。

動画の移り変わりや、切り替えの瞬間に
私は自分のiPhoneから探した、
過去のハロウィンの写真をそっと子供に見せる。

私は20代前半に、
ハロウィンはちょっと凝って楽しんでいて
自分たちでドレスを作って、
ディズニーランドに行ったりしていた。

なので私は、

ラプンツェルの「ラプンツェル」
アナと雪の女王の「エルサ」
シンデレラの「意地悪なお姉様」

に扮した自分の写真を持っている。

ラプンツェルのドレス、カツラ、メイクを身に纏い、ディズニーランドでポーズをとる私の写真をそっと子供に見せる。

「見て」

子供は、「あ」という顔をする。


「これね、私なの」
「あんなちゃんね、プリンセスなんだよ」

2歳でどこまで言葉が理解できいるかわからないけど、話し続ける。

「いつもはね、今みたいな服を着て隠れてるの。
でも本当はプリンセスなんだよ。」

「みんなには内緒だよ」

写真を見つめていた目を私に向けて子供が言う

「らぷんつぇる、なの?」 

通じた。


「そうだよ。プリンセスなの。内緒だよ。」


子供が続ける

「すごおい」「らぷんつぇる」

信じてくれたかも。

子供の母親は笑っている。
嘘つきの友達を見ながら。


そのあとは事あるごとに、
私は大袈裟に歌を歌ってミュージカルを行う。
手をしなやかに伸ばし、
バレエダンサーのようにひらひらと揺らす
胸に手を当てて、顎を上げて高らかに歌う。

子どもは楽しそうに
私と同じように歌おうとする。
友達2人は見てもいない。
これは私のいつも通りの挙動だからである。


子供が頼んだうどんを「食べない」と言ったり
食べている最中に踊ったりするので、
その度に


「お姫さま、お座りくださいませ」
「早く食べないと王子様が迎えに来られますよ」

そう話しかけると、
少し「そうか」という顔をして
座ってこちらを向く

「こえでいですk?」


母親曰く「これでいいですか?」
と言っていたらしい。

「よろしいです、お姫さま」
「立派でございます。」

プリンセス設定だったのに、
いつしか召使ポジションになってきた私。

食後は子供と私で立ち上がって
プリンセスのお辞儀の練習をしていた。
友達がトイレに行くといい、

「プリンセス講座、よろしくお願いします」

と去った。

お任せくだされ、と講座を続ける私。
スカートを持ち上げる挙動をし、
足をクロスさせ、膝を曲げてバウンドする。
そして顔を傾け「ご機嫌よう」。
これがプリンセスの挨拶である。

子供に見せると、
嬉しそうな顔で真剣に真似をする。
1回で覚えたようなので
「そう!素晴らしいですわよ」と褒めながら
2人で向き合って何度もお辞儀をする。

部屋に同じく残っている男の友達は
それを見てもいない。
まだ推しの「マコ」を大画面で見ていた。

私は大学時代に
スカートであってもスカートでなくても
よくこの挨拶をしていたから、
こんな私を見慣れてるのだろう。


「プリンセスだよ」

と嘘をついたつもりだったが、
プリンセスとして過ごしてみたら、
思っていたより自分は
元々プリンセス要素が強いのだと判明した。



今朝の新宿駅ラビリンスを全然抜け出せないのも
王室を出て街に来て戸惑っているプリンセスのようでは?と思ってきた。
例えるならジャスミンだろうか。
アラジンに出会う時の。


うーん。
具体的なプリンセスに例え始めると、
途端に「勘違い甚だしい」
と言わざるを得なくなる。


今まではただの戯言
といった雰囲気で書いてこれたのに。


まあでも強気に
プリンセスエピソードとして例を出そう。


例えば先月1人で行った韓国でも、
2日間で3回迷子になった。
その度に人に助けてもらったりしていた。
見知らぬ韓国の駅で朝6時に

「日本円しか持たず、
電車の切符が買えない外国人」
になったりもした。
なりたかったわけではないが。

韓国の若者が、私を助けてくれ
ATMに連れて行ってくれたり、
ATMが使えないとなると
なんと自分のお金で
円とウォンを両替してくれた。

こう考えたらやはり
アラジンとジャスミンの出会いでしかない。

うんうん。
私はきっと根からのプリンセスだったんだろう。


実はたまにそう思う時がある。
だって家で1人の時も、
私は家電に歌でお礼を伝えたりするからだ。

プリンセスってそういう生き物だから。

夏にクーラーがあまりにも快適すぎて、
ベットに寝転びながら寝入る前に歌を歌った

「ありがとう、君がいてくれて~♪
本当、良かったよ~♪」


西野カナの「BestFriend」。
大好きな曲。

家電に歌うのは大体この曲で、
たまにSMAPの「ありがとう」も歌う。
家電だってお礼を歌で伝えられて、
悪い気はしないはず。

だって激務の割に、
彼らの受ける対価はほとんどないからね。


1日で洗濯→乾燥コースを
3回もこなしてもらった日には
流石に自分のドラム式洗濯機に
感謝を歌わずにいられない。

時々揶揄で
「ディズニープリンセスは、
実在したらヤバいやつだ」

「急に歌を歌い出したり、
様子がおかしすぎる」
とかネットで言う人がいる。


確かに私は様子がおかしい。
友達がそれを気にしなくなるくらいには様子のおかしい行動が根付いていると、
時々気付かされる。


やっぱり私は
ディズニープリンセスなのかもしれない。
動物にだって優しいし。パイだって焼ける。



友達の子どもは、
何歳まで私と
プリンセスごっこをしてくれるんだろう。
幼少期というのはあっという間で、
すぐに終わってしまう季節だから
会える時は毎回楽しまなくてはいけない。


プリンセス講座は、
彼女が、心からプリンセスになりたいと願う
プリンセス大好き期の間しか楽しめないのだ。
次に会うまでに、
次のプリンセス講座の内容も考えておこう。
現実のプリンセスは意外と真面目なのだ。


明日は月曜日。
馬車の迎えなしで、出社予定のプリンセス。
迷子になったり、遅刻はしてはならない。

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