スーパーの行列で
コロナウイルスのワクチンが出回って、少しずつ買い物客も増えてきた頃。
自宅近くのスーパーで、品物を選んでレジに向かうと、
いつも以上の行列ができていました。
店内放送で、不具合がありカード払いに対応できるレジが
1台だけになっていると言っています。
私はもう何年も、ほとんどの買い物をカード払いにしていて、
現金はあまり持ち歩いていません。
別に急いでいるわけでもないし、
指定されたレジの列に並ぶことにしました。
私が並んだすぐ後に、年配の女性が後ろに並びました。
レジの混乱は、すぐには回復せず、
行列はあっという間に伸びていきました。
所在投げに後ろを向くと、年配の女性もうんざりした表情でした。
一瞬、視線が合って、お互いに少し、微笑み合います。
年配の女性は、他のレジの混み合い具合が気になるようでした。
「この様子じゃ、どこに並んでも同じじゃないですか。」
「そう? でも私、現金でも構わないのよね。」
「そうですか。私はカード払いのつもりだったし。
現金足りないと困るから。」
そんな会話をして、また、お互いに行列の先を眺めました。
店内には、相変わらず放送が続いています。
「お会計が混み合い、申し訳ございません。
現金の方は全てのレジをご利用いただけます。」
ふと気が付くと、背後で小競り合いが起きていました。
「ダメだよ。何やってんだ。」
先程の年配の女性の後ろに並んでいる年配の男性が、
カートを押し付けるようにして声を上げています。
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