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シナトラ研究-11: Sinatra and Me: In the Wee Small Hours by トニー・オペディサーノ/Tony O (2021) ♡シナトラの愛した曲Laura

2021年に出版された、トニー・オペディサーノ(Tony Oppedisano) がライターMary Jane Ross と共著した伝記がなかなかよいレビューを得ている。音楽を追いかけてざっと見てみた。


トニー・オペディサーノとは

シナトラの親友ジリー・リッツォのマンハッタンのクラブでシナトラと会い、付き合いは、1970年代から最期の日まで続いた
Sinatra b.1915
Tony Oppedisano b.1951
36歳差

彼はトニーOと呼ばれている。シナトラの妻と共にシナトラの死を看取った唯一の人。色々知っていくと、トニーO氏は、シナトラの親友であり、側近のような人だったとわかる。語口は穏やか。シナトラ研究(10)で紹介したドキュメンタリーによく登場する。いつも沈着冷静。陰で色々仕切っている、皆に頼りにされている。決して前に出ない人。きっと大物を陰で支えることに生き甲斐や使命を感じて生きてきた人なんだろう。

シナトラの妻、Barbara Sinatra は2017年に90歳で、そしてシナトラの最初の妻、Nancy Sinatra は2018年101歳で他界している。この伝記はそれを待って書こうとしていたのかもしれない。シナトラの詳細な伝記で知られるJames Kaplan、そしてPete Hamillもシナトラが生涯最も愛した女性はエヴァガードナーだったと語っていたが、トニーO氏は一番最初の妻、ナンシーだと言い切っている。

伝記のページにあったトニーO氏の略歴

AI 翻訳

無料で読める第1章

シナトラよりも36歳下。シナトラの1971年の引退コンサート後に知り合った。つまりシナトラの50代の終わりから逝去する82歳までをかなり深く知っている人。共通点はイタリア人で音楽家であること。長い一章が以下のアマゾンページで無料で読める。試し読みのところではなく販売ページの一部として掲載。フォトグラフィックメモリー (eidetic memory) があるとトニーO氏本人が語っているように記憶力に驚く。シナトラと出会って、下の曲をシナトラの前で弾いたところまでの過程がドキドキしながら読める。

How Insensitive (Insensatez)●1963→1967

作曲:Antônio Carlos Jobim (1927-1994)
ポルトガル語作詞:Vinícius de Moraes/ヴィニシウス・ヂ・モライス
英語:Norman Gimbel
アルバム:Francis Albert Sinatra & Antônio Carlos Jobim (1967)

一章が面白い。シナトラとの出会いまでが刻々と描かれる。Tony Oはシナトラが憧れたイタリアの大家族で育った。シナトラは一人っ子だった。Tony Oの生い立ちを知ることがどうしてシナトラと親友になり得たかをよく説明している。Tony O自身、シナトラに会う以前、長年シナトラのファンだった。意図せずシナトラの親友であるジリー・リッツォに出会う。そして彼と親睦を深めたところで、シナトラに紹介され、ジリーのクラブで、このHow Insensitiveをギターで弾いた。この曲がリリースされたのは1967年。出会ったのはシナトラの1971年の引退後だった。ギターで最後のコードを弾き終わった時、シナトラは言った。

When the final chord faded out, he opened his eyes and looked over at me with a smile that could light up a room. Then he said, “That was very, very nice, kid.”

無料で読める一章、上記参照

部屋を照らすような笑顔でってわかるなあ
その日は徹夜で過ごし、シナトラからTony Oへ、朝告げられた一言。音楽目指している人への励ましになる↓

“Let me tell you something. You’re a really talented guy. This business can be cruel. It can knock you down. It can kick your teeth in, but when it’s good, there’s nothing like it. So if you have the passion for it, hang in there. It will be good to you.”

無料で読める一章、上記参照

オーディオブックを視聴

この本のオーディオブックが、Spotify のプレミアプランで無料で聴けることを発見。聴き始めたら、なかなか面白いのだが、Chapter番号だけで、目次が表示されないので、目次をハードブックの試し読みページからスクショさせてもらった。


余談なのだが、シナトラ関係のオーディオブックを3冊ほど聞いた。Pete Hamill のWhy Sinatra Mattersはアマゾンで購入し、Tony Oのこの本とJames KaplanのFrank: the VoiceはSpotify プレミアプランで聞いた。オーディオブックには目次がなく、Spotify で聞くと章分けは全てハードブックとは違っていて、今、全体のどこを聞いているのかわからなくなる。ハードブックを買えと促しているのか 😉

このTony O氏の本をざっと聴いた後、一番興味のある6章:You Will be My Musicをしっかり聞いてみることに。以下に挙げた音楽は皆この章から。

The Nearness Of You●1937→1960♡Tony O

36歳年下のTony O氏が最初に惹かれたのはこの曲だった。
曲: Hoagy Carmichael
詞: Ned Washington
編:Riddle
アルバム: Nice 'n; Easyアルバム(1960 Capitol)
アカペラ、次にピアノ伴奏だけで静かに始まる。

Forget To Remember♡シナトラ思い入れの曲

この動画に出てくる写真が渋い。必見!
作曲:Victoria Pike
作詞:Teddy Randazzo
編曲:Don Costa
Goin' Out of My Head (1969) のB面
アルバム:1995年のRepriseの20 CDセット

1969年のMy Way アルバムに録音したが、ヒット曲になってツアーで歌うことになったら、ナンシーとエヴァを思い出し感情的になりすぎるので省いた、と。

The Man In The Looking Glass●1965

Songwriters: Bart Howard
アルバム:September of My Years (1965)
Mia Farrow を思って録音した、と本にある

It was a good year by the Kingston Trio●1961

It Was a Very Good Year by Sinatra ●1965

作詞・作曲:Ervin Drake
編曲:Gordon Jenkins
アルバム:September of My Year  (1965)
この本では、シナトラがBrothers Fourバージョンを聞いて気に入り、Jenkinsに編曲を依頼したとあるが、The Kingston Trioの間違い。Brothers Fourバージョンはシナトラが録音した後、同年に録音されている。Ed O'Brien著のSinatra 101でも確認。

この曲・アルバムは1966年以下の部門のグラミー賞を獲得:
Best Male Vocal Performance
シナトラ
Best Arrangement Accompanying a Vocalist or Instrumentalist:
Gordon Jenkins
Album of the Year:
September of My Years – Frank Sinatra (Reprise)
Best Album Notes: 
September of My Years – Stan Cornyn, annotator (Reprise)

出版時にTony O氏が出演したトークショー

このトークショーも面白かった。フランクシナトラが一番好きな曲を紹介していた。

このトークショーとは?

A Mick, A Mook and A Mic is a weekly audio and video podcast. It features Frank Pace, a four time Emmy nominated producer, sports agent and author – and Billy O’Connor, a comedian, author, and Vietnam veteran who for 20 years also served as a NYC Firefighter where he was a proud first responder on 9/11. The show provides uncensored commentary about what’s going on in Hollywood, sports and current events. It also draws from the hosts very diversified 140 years of life experiences. Each episode features iconic guests from sports, entertainment or other walks of life.
「A Mick, A Mook and A Mic」は毎週配信されるオーディオおよびビデオポッドキャストです。この番組には、エミー賞に4度ノミネートされたプロデューサーでスポーツエージェント兼作家のフランク・ペースと、コメディアンで作家、ベトナム戦争の退役軍人であり、20年間NYC消防士として働き、9/11の際には誇り高い初動対応者として活動したビリー・オコナーが出演します。番組では、ハリウッド、スポーツ、時事問題についての無修正のコメントが提供され、また、ホストたちの多岐にわたる140年の人生経験も活かされています。各エピソードには、スポーツ、エンターテインメント、その他の分野からの著名なゲストが登場します。

https://amickamookandamic.com/about/

上のラジオトークショーから↓

Laura ●1947 (Columbia) ♡シナトラが一番好きだった歌

Tony O氏によると、シナトラが一番好きだった歌がこれ
作曲:David Raksin
作詞:Johnny Mercer
楽器演奏だけの音楽が 1944年の映画Lauraで紹介され、のちに歌詞をつけ、多くの歌手が歌うジャズ・スタンダードになった。シナトラも1947年に録音。
編曲:Axel Stordahl

Laura ●1957 (Capitol) ♡シナトラが一番好きだった歌

作曲:David Raksin
作詞:Johnny Mercer
編曲:Gordon Jenkins
アルバム:Where are you? (1957、Capitol)
歌詞:
Laura is the face in the misty light,
footsteps that you hear down the hall

The laugh that floats on the summer night
that you can never quite recall

And you see Laura on a train that is passing through,
those eyes how familiar they seem

She gave your very first kiss to you,
that was Laura but she's only a dream

なんか印象派の絵画を見ているような曲。こんな歌が好きだったシナトラ。ロマンチストだった。

Laura 他のバージョン

Wikiを読むと、こうあるので、聞いてみることに。カッコ内は足した情報。
Some of the best-known versions are by Woody Herman(ボーカル),  Dave Brubeck(ピアノカルテット), Johnny Johnston(ボーカル), Emil Newman(映画主題歌), David Rose(オケのみ), Billy Eckstine(ボーカル), Charlie Parker, J. J. Johnson, Carly Simon, Frank Sinatra, Spike Jones[1] and Julie London

Laura by Woody Herman (Vocal) & his orchestra●1945 いい声↓

Laura by Dave Brubeck (pianoカルテット) きれい●1953↓

Laura by Johnny Johnston (Vocal) with Paul Baron and his Orchestra●1945 いい声↓

Laura directed by Emil Newman - 1944年映画の主題歌 すてき↓

Laura by Billy Eckstine (ボーカル)●1953 渋い!

シナトラ研究 資料


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