「魔法は便利ですね」 アーモリーオブソウル鍛冶店前にステラがゲートを出した。 おやつクエのためにマークしたその場所。 毎日ここにリコールしてきて、シェダルのことを思いながらおやつクエをこなし、深夜食堂でシェダルを垣間見ようとしながら時間をつぶした。 たった3週間ぶりなのに、すごくなつかしく感じた。 「ステラさんに、子供の頃の話をしましたね」 「はい。 冒険者になるのを夢見て、やんちゃばかりしていた、と」 ゆっくりと歩きながら、2人は言葉を交わす。 さっき愛を
その日の夜、熱が出た。 手足や背中、腰も痛くて、生きた心地がしない。 いつもはブリタニア中を飛び回っている同居人たちが代わる代わる看病してくれなかったらどうなっていただろう。 同居人の存在のありがたさを感じたが、身体が良くなるとすぐに、そんな気持ちは吹き飛ばされた。 元気になったステラに同居人たちが詰め寄ったのだ。 シェダルが心配して、毎日様子を見に来ていたらしい。 あれは誰なのだと、洗いざらい吐かされて、引かれたり、にやにやされたりして、これはこれで生きた心地
2018年4月 出雲『第1回出雲文芸の星』出品作品 *-*-*-*-* アンブラ。 陰気だ、暗い、怖い。 そう言ってこの街を嫌う人も多い。 しかし、ステラはこの街のしっとりと湿気を含んだような静けさが好きだった。 何よりこの街には星が輝いている。 どういう仕組みなのかはわからないけれど。 自分の名前に通じるその輝きがいつも自分を励ましてくれているような気がしていた。 「ふー。 あの口の悪さ……どうにかならないかしら……」 おやつクエを終え、恐怖食堂へト
なんと、1年2か月ぶりの投稿です。 見出し画像を準備するのが億劫で、記事自体は出来ていたのに、そのまま放置していたようです。 情けないというか、もったいないというか、愚かというか、ものぐさにもほどがあると、自分でも思います…。 深く深く反省して、せめて月に1作品くらいは公開していきたいところ。 でもUOのお話はもうあとひとつしかないので、新作を書かねばならないのがちょっと心配。 現代ものとか、オリジナル世界のお話でもいいかしら…? あと、見出し画像準備するの大
やがて、ジョンの家とアメリアの家との分かれ道に着いて、ことさらいつものようにして別れる。 家が見えてきて、おばあちゃんにクロウのことを相談したい気持ちが大きくなる。 だけど、ジョンの小さな後ろ姿を思い出して、何も言えなくなる。 「おばあちゃん、ただいまー!」 ドアを開ける前、心のスイッチを入れ替えて、元気良く声を出す。 おばあちゃんはするどいから、ちょっとでも違う風になるときっと心配してしまう。 今もう何か気づいているかもしれない。 お弁当の量が日に日に少し
2018年4月 第一回 無限文学賞 応募作品 *-*-*-*-* アメリアはブリテインの近くの森の中に住んでいる。 近く、とは言っても、森から街道に出るまでに数時間、街道を通ってブリテインまでさらに数時間。 だいたい半日がかりの道程を近くと言っていいのなら、だけど。 ご近所さんは十数件。 森の樹木に隠れるように、守られるように小さなおうちが建っている。 アメリアと同じ年代の子は2年前に学校を卒業して、ブリテインでウェイトレスを始めたお姉さんのような幼馴染がひと
拙作をお読みいただきありがとうございます。 まずは蛇足。 冒険を終えたフィーアは、イレーヌ先生に事の次第を報告し、長く本を借りてしまったことを詫び、アーティファクトの処遇について尋ねました。 本来これはグリゼルダが隠した物で、彼女の持ち物。 グリゼルダに返せないか、そして出来たら、姉に貸し出してはもらえないだろうか、と。 表情を変えぬまま、フィーアの話を聞いていたイレーヌ先生は、自分はそれを隠してもいないし、グリゼルダの知人でもない、だからアンの言うとおり、エマ
振り返る余裕もないが、後ろからは、アンの雄叫びと、魔物たちの断末魔が聞こえる。 怖かった。 だが、その一方で、フィーアもテオも、心の高鳴りを抑えられなかった。 言われた通り、家の影に入ると、黒いポーションを飲み干す。 ほどなく二人の姿が消え、気配すら感じられなくなる。 どれくらいの時間が経っただろう。 長いようにも、あっという間にも感じられた。 魔物たちの断末魔が間遠になり、フィーアとテオの姿が現れた。 顔を見合わせても、二人とも言葉もない。 静かな時
そこにいたのは女性の冒険者。 若くて優しそうに見えるが、見たことのないような鎧を身につけて、無造作に持っている斧も何だか怖そうだ。 「アーティファクト……」 フィーアの答えを聞いて、女冒険者はクスッと笑う。 「こりゃ、思いもかけない答えだな。 びっくりした」 「笑うなんて……ひどいです……」 フィーアが思わず、ムッとすると、女冒険者はゴツイグローブをはめたままの手をフィーアに伸ばし、ぐりぐりと頭を撫でた。 「ごめんよ。 君たちみたいな子供から、そんな単語が飛
ブリテイン文芸大会 [Second] ~アンさまがよければすべてよし~ in Hokuto 投稿作品 ブリテイン文芸大会 [Second] ~アンさまがよければすべてよし~ in Hokuto 告知 ブリテイン文芸大会 [Second] 展示会のお知らせ わたしが主催した文芸大会に寄稿した作品です。 初めてまともに書いたUO小説。 何か、とっても初々しい……。 自分の主催イベントということで、登場人物に自分がいたり、手伝ってくれていたともだちのキャラが突然
次の作品をアップするまでに、日数がかかってしまうと思われるので、忘れ去られないように、あとがきでお茶を濁すことにします! だいぶ前に書いた作品なので、いろいろ忘れてしまっていますが、それでも読み返すと、連想ゲームのように思い出してくるものですね。 ネタバレもあると思うので、↓のリンクから作品を読んで、あとがきに戻ってきていただけるとうれしいです。 まずは、拙いわたしの作品を読んでくださり、あとがきまで開いてくださり、心からお礼申し上げます。 ありがとうございます!
夕餉の準備をしているのだろう。 村に入るとあちこちから良い匂いが漂ってくる。 ばあちゃんの待つ自宅からは魚を焼く匂い。 今日は何の魚かな、と思いながら扉を開く。 「ばあちゃんただいまー」 「おかえり。 そろそろ夕飯だよ。 支度を手伝っておくれ」 魚は我が家では贅沢品だ。 ばあちゃんは言葉にはしないけれど、お社参りにわたしが行くことを喜んでくれていて、魚を準備することで労わってくれているのだろう。 普段の夕飯は、味噌汁とご飯と漬物、良くて卵焼きだ。 もっとも
2016年9月 倭国ムーングロウイベント 第4回短文館コンテスト「徳之島の秋 - Autumn in Tokuno -」出品作品 第4回・倭国短文館コンテスト「徳之島の秋 - Autumn in Tokuno -」のお知らせ 第4回・倭国短文館コンテスト結果発表&表彰式参加レポート 第4回・倭国短文館コンテスト/Web閲覧版&感想文公開 ウルティマオンライン世界にある和風な地域『徳之島(とくのしま)』 イベント4回目はその徳之島の秋がテーマでした。 『ちっちゃな魔法使
2020/08/02改 はじめまして。 アンと申します。 noteに作品を投稿し始めて、6作品になりました。 編集の仕方にもなれてきましたし、なんとか続きそうなので、ここらで自己紹介と作品の索引を作っておきたい、と思います。 まずは自己紹介から。 長くなりそうな予感がするので、興味ない方は、ぐぐぐっと下まで飛ばしちゃってください。 あ、でも、ウルティマ・オンラインを知らない人は、真ん中へんの説明を読んでもらえるとうれしい! わたしのライフワーク? 別のもうひと
「んっ……んぅ……」 お腹のあたりがあったかくなる感じがしたと思ったら、身体中がぽかぽかしてきて、気持ちいいなぁ~と思って目を開けた。 「あ! 起きた! 目開けた!」 そう言ったのはママ? うれしそうに笑って、お姉ちゃんと手を握って飛び跳ねてる。 「まだ起きちゃダメだよ、じっとしていて」 そう言って、アタチのお腹の辺りに手をかざしてるのはパパ? 「ママ? お姉ちゃん? パパ?」 夢かな?って思いながら、3人をそう呼んでみる。 3人はアタチの言葉に一瞬
2015年12月 倭国ムーングロウイベント 第3回短文館コンテスト『メリークリスマス★ブリタニア』出品作品 倭国ムーングロウイベント/第3回・短文館コンテストのお知らせ 第3回短文館表彰式&慰労会レポート 第3回短文館「メリークリスマス★ブリタニア」/Web閲覧版公開 ↑ Web閲覧版はゲーム内の本をめくるように読むことができます。 すごい! この作品は、『ちっちゃな魔法使い』の続編ですが、前作を読んでなくても楽しんでいただけると思います。 なんとか、クリスマス中にUP