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料理男子に捧げるキッチンリセット

夫は料理男子である。

家で食べる料理のほとんどは夫が作り、食材の買い出しまでしてくれる。私たちは夫婦で在宅ワークなので、用事がなければずっと家にいるし3食とも家で食べることが多い。

もし、私が3食とも作らなければいけなかったら悲鳴をあげていただろう。そんな主婦の悩みナンバー1ともいえる日々の食事作りから解放され、料理をしなくていい妻など、少なくとも私のまわりには1人もいない。

私の名誉のために言わせていただくと、私は料理が嫌いでも苦手でもない。料理教室に約7年通い、食べることが好きでテーブルセッティングも人を招くのも好きな方。

でも、たしかに毎日だったら苦痛になっていたかも。20~40代のわが家は2人とも仕事が忙しく、家で食事を作る回数が極端に少ない家だったからこそ、料理すること自体が非日常的だったのだ。

とにかく、今は夫が作ってくれるので私は心から感謝をして美味しくいただく。なんてしあわせなのだろう。

そう言うと、特に女性は羨ましがり、数年前に夫を亡くした高齢の叔母などは「次結婚するなら料理ができる人とする」と決めたそう。子育て中の妹は仕事帰りに買い物をし、夕飯を作って片づけして、翌朝のお弁当準備と大忙しなのに、なんだか申し訳ない。

ちなみに、私は料理メインのXアカウントを持っているけど、載せているのは夫が作った料理ばかり。だからハッシュタグは、#作ったのはだんなさん

ありあわせで作ってくれたペスカトーレ


もともと料理好きの夫が、毎日作るようになったのは夫婦で在宅フリーランスになったことが大きい。先にも書いたとおり会社員だった頃は2人とも忙しく外食が多かったが、3食とも家で食べるスタイルにシフトしたことで夫の料理熱がさらに高まった。

ちなみに、朝食だけは私が担当している。夫は「朝食も作るよ」と言ってくれるけど、3食作ってもらったら私は何もできなくなってしまいそうで怖い。

今だって、いざ夫が具合悪くなったら一体何を作ったらいいのだろう?と頭をひねってしまう。料理が苦手じゃないと書いたけど、もはや朝食メニューくらいしか作れないのではないか。

こんな有様なのだから、キッチンに立つことが日課じゃなくなると億劫で余計にできなくなるので、せめて朝だけでも私が用意することにしている。

ところで、料理は夫の趣味でもあり心の拠り所だった。

これまで人生の岐路に立ったとき、震災で家を失ったときや人生がおびやかされそうになったとき、その難局を乗り越えられたのは料理のおかげ。

食材を切り刻み丁寧に料理をこしらえる。品数も量も多く作るので、食べられない分は冷凍ストックしたり、差し入れしたり。そのひとつひとつの作業が、料理と向き合っている時間が夫を救ってくれた。

だから、私は“敢えて”邪魔をしない。
その代わり、私にできることはキッチンをきれいに保つこと。

夫が料理をしたい時にすぐに取りかかれるように、ガス台やシンクまわりをピカピカにし、タオルを交換して、シンクの上に不要なものを仕舞う。

そしていちばん大切なことは、夫が作った料理を無駄にしないこと。せっかく作った常備菜を容器に保存したまま、食べ忘れて傷んでしまうことがないよう、常に気を配っている。

  • 作った日付を貼る

  • 粗熱が取れてから容器に入れる

  • 取り分けて少なくなったら小さな容器に入れ替える(素早く)

  • 容器の蓋についた水滴は拭き取る

  • 食べきれない分は冷凍する

常備菜は何度も清潔な容器に入れ替えられ、冷蔵庫もすっきり。私は密かに悦に入る。

夫が作る常備菜

もうひとつのポイントは「先入れ先出し」。
食材を無駄にせず過不足なく持つための小さなルール。もっとも、夫に強要せずとも自然にそうなるように、先に使ってほしいものを手に取りやすいように配置しているのだ。自分だけのこだわりだけど、気持ちよく料理できることにつながっているはず。

整っていると、キッチンの状態が健全。そして気持ちも。

夫は今日も楽しそうに料理をしており、キッチン続きのリビングがいい匂いで充満している。その中で仕事をしている私にはある意味拷問だ。

脳内が白ワインか芋焼酎。
今すぐ仕事の手をとめて、グラス片手に飲み始めたい衝動に駆られる。ああ、晩酌が待ち遠しい。

そう思いつつも一旦仕事を始めると、トイレに行くのもお茶をするのも忘れ集中しすぎてしまう。だから、18時には仕事を終えるように決めた。

仕事が終わったらお風呂に入り、ようやく晩酌がスタート。夫が作った料理を肴にお酒をいただく。大抵はビールと芋焼酎のソーダ割、たまに日本酒や白ワイン。結局何でもいい。

テレビや映画を観ながら、いろんな話をしてゆっくりと過ごす時間は、なんて穏やかで心地よいのだろう。あんなに飲みに行っていたことが嘘みたい。でも、もう存分に外食は楽しみ尽くした気もする。これでいいのだ、家時間を楽しむためにフリーランスになったのだから。

22時、キッチンをリセットして排水口を掃除したら私の一日は終わり。そうそう、夜中に夫が水分補給する水と新しいグラスも忘れずに。


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