夏は3人に暑く 冬は3人に寒い
「暑い、寒い、歩きたくない~!」
ちょっとしたことで、いつもうるさい。
バンドのギターでボーカル、あきこのことだ。
ラブラブフォーエバーという
女子高生の語感のような名前の
ガールズバンドに出会い、
ドラムで参加してから4年位経った。
このバンドに入ったのは、
彼女がすてきだったから。
初めてラブラブフォーエバーを観たとき、
力強くてかっこいい演奏と歌声、そして
MCが良かった。
MCに無反応なお客さんたちに
(ちょっと強面な男性ばかりだった)
「わっ!」っと突然言い、
威嚇するようなポーズをして、
何食わぬ顔で演奏をはじめた。
それがとても面白かったのと
無反応にたいして媚びすぎなくて、
(けど、アクションはする)
それがすごく、すてきに思った。
彼女はいつも怖気づかない。
遠征先のライブで曲の間奏でギターの弦が切れたとき
彼女は「じゃーん、じゃんじゃん!」と
口でギターの真似をし始めた。
それを後ろから見て、めちゃくちゃ笑いながら
ライブをした。
ライブがなくてもよく遊ぶ。
スタジオでは、お菓子を持ってきてくれる。
もらったお菓子を食べ始めると、
「このお菓子は誰が持ってきたものですか?」
と謎のイニシアチブを取ろうとする(笑)
彼女は、自分が処世術に長けていることも
茶化すのがうまい。
「このイベントの権力者は誰ですか~?」
と、ステージから言っているのを
何回か聞いたことがある(笑)
友だちのことに熱く、
悩みごとや不調があると敏感に反応して
全力で向き合う。
買い物が上手くいったとか、
新しい美容院が良かったとか、
ささいなことをとても喜ぶ。
多分、高校生くらいのころから
芯は変わっていない人だと思う。
そんな彼女が書く歌詞は
とても素敵だ。
「きみ至上主義」
きみの夢を見た ずっと会えなくても
思い出さない 過去じゃないから
きみ至上主義
いくらこんなに夢中でも
犬の散歩 お花の水やり
昨日と何ひとつ変わらぬ毎日を
夕焼けがさらってゆく
「100年歩く」
ごめんね、ありがとう。
それだけのことなんだけけど
君だけには変な意地とかプライドなんて優先してた。
そばにいて、大好きと
それだけのことなんだけど
僕たちには越えられないもの越えてきた証があるから。
海はもう見慣れたな。
ファミレスも食べつくした。
「Let's go 私応援歌」
100パーセント分かり合えはしないから
どんなに大事かギュッてして伝えよう。
容姿もよく、
人と対等でいようと接する彼女は、
いつも自信に溢れているように見える。
その上で彼女の歌詞からは、
生きている中で上手くいかないこと。
大切な今が過ぎ去ってしまう喪失感。
それでも貫いたこと。
分かり合えない前提で人を分かろうとすること。
大事に思うなら、何をどうしても伝えなくちゃ。
そんなすてきなところが見えてくる。
歌が空想ではなく、かといって
傷をみるような悲観的なものでもなく、
ただ現実を歌ってる。
感じたことよりも、
何を思ったのか、考えて歌っている。
そんなところがとても好きだ。
自分のバンドのボーカルを
こんな風に愛しているのは
人によっては気持ち悪いと思うかもしれない。
でも、私は自分が1番大事だから、
愛していないと一緒の時間を過ごすことができない。
みんなそうだけど、大人になった時間は、
忙しなく埋まる。
だからこれは仕方ないというか、
普通かもね。
仕事とも趣味とも言えないバンド活動。
どんな意義があるのかと問われると
何とも言えないけれど、
人が生きていること自体不思議だから
意味のあることばかりがすべてじゃない。
ただ、
バンドは、チームだ。
お互いの貴重な時間を用いてやっている。
強いていえば、
最低限のチーム力が養われる、かも?
(ほんと?)
で、土日や仕事終わりに練習をするのだけど、
それこそ貴重な時間じゃないですか。
その練習に寝過ごしてしまったことがあるんです。
起きたら、練習が終わったあと。
血の気が引くのを感じながら、
彼女たち(ボーカルあきこ、ベースミキティ)に
電話をした。
…つながらない。
LINEで謝る。
…返事がこない。
これはもう、完全に怒っている。
(そりゃそうだ)
…やっとLINEの返事がきた。
「本日の練習の成果です。」
1本の動画が添えられていた。
2時間の練習、
ドラムがいなくてやりにくかっただろうな。
でも彼女たちはやってくれていたのだ、申し訳ない…。
そんな気持ちで動画を開いた。
チャ~ラチャラララ、チャ~ラチャラララ。
聞いたことがあるイントロ。
楽器を持たない2人。
バタバタとなにか踊っている。
そう、2人は、恋ダンスの練習をしていた。
全然意味が分からなくて腹を抱えて笑った。
へたくそなダンスも、とても可愛かった。
なぜ恋ダンスブームが収束した今、
恋ダンスだったのかも全然分からないけれど
こんな風に彼女たちは自由で、
その自由さでさり気なく気遣い、
気を緩めることもしてくれる。
世に出ていて、
今をときめくガールズバンドたちって
若い方じゃないですか。
で、いまの世の中でいうと、
我々の年齢は、女性としての
(お金になるという意味でもてはやされる)価値は、
市場としてとうに過ぎているんです。
でも、ラブラブフォーエバーを
70歳とか体が動くまでやっていたいな。
私たちがたのしいために。
※そこまでいくとガールズバンドも凄みがでそう(笑)
ただ、このバンドの芯は
ボーカルとベースだ。
(この2人どちらか変わっても成り立たない)
※自分が2代目ドラムの誇りは持ちつつ
そこで、少し不安になっていた。
もしかしたら辞めたいと
言われる日が来るかもしれない。
大好きなクロマニヨンズも
「スピードとナイフ」でこう歌う。
"夏は二人に暑く、冬は二人に寒く。
~~~変わらないものなんか 何ひとつないけど
変わるスピードが 違ったんだなあ"
すごく好きな歌。
もしも変わってしまっても、
それは縛れないから、
受け入れるしかないけれど。でもとても悲しい。
***
先日3人で会ったとき、
あきこが思わぬことを言った。
ライフステージが変わってバンドを
辞めることは考えられない。
※言い回しは違うけど要約するとこう。
それを聞いて
ベースのミキティととても喜んだ。
良かった。
本当に良かった。
われわれはこれからも
年甲斐もなくラブラブフォーエバーだった。
なんか、文字にすると笑える(笑)
昔、何かのときに、
あきこが言ったことを
ふと思い出した。
「ね~一緒に行こうよ~
暑いとか寒いとかダルいとか一緒に言いたいよ~。」
何気ない会話。
暑いとか寒いとか面倒くさがることとか。
いちいち言うなぁと思っていたけど
全部、そのまま分かちあってくれていたのね。
夏は3人に暑すぎて、冬は3人に寒すぎるけれど、
これからも辛いことや嬉しいことを
分かちあって楽しめるんだなと思った。
すてきじゃないできごとは
3人ともあるけれど、
変わるものと変わらないものがあるのは
なんて素敵なことだろう。
わたしのすてきな2人。これからもよろしくね。