河童
オッサンと出逢ってからの毎日は
毎日 1秒1秒 私のからだの細胞すべてが
オッサンを想うことに集中していた。
次会えるのはいつだろう?
そればっか考え
それだけの為に生きてる。
あの夏
札幌で1日目を終えるころオッサンが言った。
「次の日からはどうしよう?って考えてたんだけど、温泉に行こうと思う。
アンとは、
ホテルとかじゃなくて、
こういう街じゃなくて、
暮らすような場所で過ごしたいと思っててさ。」
ふぅーん。
行こう行こう!
その日、ワクワクして眠れなかった。
次の朝、札幌から車を走らせ
トンネルをくぐり右にまがると渓谷がみえた。橋の先っちょにカッパがいた。
気がつくと
所々に河童がいる。
「到着したぜ!」
オッサンはアパートみたいな
寮のような
白い建物の中に入り
中から気のいい明るい女性が出てきた。
彼女が撮ったスナップ写真がそこらじゅうの壁に貼られており、どれも優しい
花とか定山渓の写真ばかり。
ここが好きなんだろうな。
結婚はしてるのかな。
女性の生き様をぼんやり想像した。
私達にあてがわれた
306号室は普通の部屋だった。
キッチンがあって
炊飯器もある。
「暮らせるね!」
これがコンドミニアムっていうんだって。
7階には本物の温泉があって
コインランドリーもあって
下の階から下手なカラオケも聴こえてきた。
残りあと2日、
この部屋でふたりで暮らすことになった。
「定山渓」
おだやかな色気がある街。
偽物の二人がえらんだ場所。