穴の中の君に贈る
本文
前略
いかがお過ごしですか。
僕は元気です。
君が穴の中に閉じ込められて5年が経ちました。
僕たちは変わらず過ごしています。
僕は後悔の念にさいなまれております。
無理もありません。
あの日みんなで洞窟探検と称して、君を穴の中に閉じ込めた日。
僕はただただ何もせず、見ていることしかできませんでした。
君が閉じ込められた日から、何度も解放しようと努力しました。
しかし結果は知っての通りです。
閉じ込められて数日後、君が息を引き取ったと一報がありました。
周りの仲間たちは大喜びでした。
僕は後悔ばかりです。
何故こんなことになってしまったのか。
何故止められなかったのか。
君が僕を恨んでいるのは明白です。
赦されることではありません。
最後になりますが、助けてあげられなくて本当にごめんなさい。
君が無念を晴らすことができるよう願っております。
草々
男は手紙とナイフを穴の前に置いた。
せめてもの償いだろう。
毎年来ては手紙とプレゼントを置いているのだから。
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