スライダーの偉大な滑り方
本文
「よっ!ナイスピッチング!」
投球―厳密にいえばスライダー―の練習をしていた鷹丘のもとに鷲見が現れた。
「全然だよ」
上手く滑らないのだ。
利き手と逆方向または下方向に「急に」滑っていくのだが、どうやってもストライクゾーンに滑り込まない。
休憩中、2人はスライダーについて話を始めた。
「どうすればうまく滑り込めるのかな」
「それな。あいつのはマジでバケモンだよ」
「1秒じゃ遅すぎるぜ?」
「急旋回すぎだろ」
あいつとは、別の学校に通う辰巳のことである。
特にスライダーが得意な投手だ。
辰巳のスライダーはストレートと本当に区別がつきにくい。秒よりも短い時間で判断しなければならないのだ。
しかも、滑り方も美しい。
それでいて、ストライクゾーンを確実に突いてくる。
まさに「偉大な滑り方」。
そんなトリッキーな軌道はいまだ打てたためしがない。
無論、自分たちが見様見真似でやってみても上手くいくはずもない。
自主練習に戻った2人は、交互にスライダーを投げていた。
一瞬だけ、良い滑り方をしたような。
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