(2023.03.22追記)【原神】ダーリの意味と「カリベルト」のちょっとだけ感想

以前こんな記事を書いたのだが、色々見ていてそういやこれはちゃんと調べてなかったなと思ったことがあるので、別記事にする。長いので。

ダーリの語源について

さて、Genshin Impact Wiki英語版にこんな一説があった。

The Arabic-Persian word "dahri" (Arabic: دَهْرِيّ dahriyy; Persian: دهری dahrī), derived from dahr (Arabic-Persian: دَهْر, "the course of time, fate"), is a theological term which refers to an atheist, or an adherent of the doctrine that the universe has no beginning in time. The term has been used in different ways in Middle Persian and Islamic writings, but generally, dahri deny the existence of a creator god and believe that the world exists eternally in time.

Genshin Impact Wiki「Valley of Dahri」より

アラビア語・ペルシア語の「ダーリ」(アラビア語:دَهْرِيّ dahriyy、ペルシア語:دهری dahrī)は、dahr(アラビア語・ペルシア語:dahr)に由来する(دَهْر, "the course of time, fate")神学用語。無神論者、つまり宇宙には時間の始まりがないという教義の信奉者を指す言葉である。
この用語は中世ペルシア語やイスラム教の著作で頻繁に使用されているが、一般にダーリは創造主の神の存在を否定し、世界は時間の中に永遠に存在すると信じている。

上記の翻訳

自分でちょっと考えてみる。
なお私はアラビア語、ペルシャ語には明るくない。そのためこのままwikiの記載が真実であることとして、この先考察する。

「ダーリ」の意味をかみ砕いて考える

まずイスラム教はヤハウェの宗教、つまりキリスト教の兄弟宗教だ。
だから神話をある程度共有していて、創世神話も同じ。つまり旧約聖書だ。
旧約聖書内の創世神話はこうなっている。

はじめに神は天と地とを創造された。
地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。
神は「光あれ」と言われた。すると光があった。
神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。
神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である。

創世期第1章

何が言いたいかというと、聖書の世界では(つまりユダヤやキリスト教、イスラム教)、昼夜の概念を生んだのは神だ。
神こそが「光あれ」と言ったから光が生まれ、昼と夜という概念が誕生した。
時間の概念よりも先に神が存在し、すべてを作ったのは神なのだ。

ところがダーリは「宇宙には時間の始まりがないという教義の信奉者」であるわけだから、時間を生んだのは神ではないと考えていた。
神とは関係なく、時間の概念(おそらくここで言えば昼夜のこと)は永遠として存在しており、誰かが作り出したものではないと考えたのだろう。
だからこの考えは「神は存在しない」ことと同義であり、ゆえに無神論者なのだ。

追記:2023/03/22

どうやらこの「ダーリ(DAHRĪ)」という語句、元来はゾロアスター教の用語っぽい。
ただ上記の記事を読んでいくと「コーランからの引用ではないか」という文面も見られ、とにかくアラブ世界で古くから使われている言葉であることが分かる。

ゾロアスター教は「世界最古の一神教」とも呼ばれているが、実に特徴的な信仰がいくつかある。
最高神であり正義の神「アフラ・マズダー」と悪の神「アフリマン」が存在する善悪二元論の宗教であり、拝火教という別名の通り、炎を崇める。また葬儀の方法も独特で、遺体を鳥に食べさせる鳥葬を行う。
終末論などにおいて、アブラハムの宗教にも影響を与えたと考えられている。
で、そんなことを色々追加で調べていて面白いことに行き当たった。

中世以降、ゾロアスター教の最高神「アフラ・マズダー」の役割は「ズルワーン」と呼ばれる時間の神が担うようになっていった宗派もあったのだという。

最高神が時間を担う神であれば、時間を作り出したのが神でなくなったとき、その神はそもそも存在しているのか?というのは、神の存在意義を問うには十分な疑問だと思う。
神が先か、時間が先か。
深読みし過ぎなのはよく理解しているけれど、この「ダーリ」の語句、実はめちゃくちゃ重要な意味が含まれているのではないかと思ってしまう。

要するに「カーンルイア」が神を頂かない国であるから、無神論者を指す言葉をそのままスメールではカーンルイアや人々を表す言葉とmihoyoは設定したということだ。
スメールの人々はずっとなにがしかの神を皆が信仰していたから、彼らに対して信仰を持たない人々ということで「無神論者」という対比で名付けられたのかもしれない。
それ以上に、スメールのモデルとなったアフリカ~中央アジアはイスラム教国家が多いので、丁度世界観の構築という意味でも、その出典元からして適した言葉だろう。

さて、そういう意味を持っていた言葉ということがゲーム中に反映されていたらすごく面白いのだが、それはどうだかわからない。
ただ実際ドラゴンスパインで入手できる「記録者の箱」にはこんなフレーバーテキストが添えられている。

「どこかで人々が神のいない国を造っているのを耳にした。もしかしたら、彼らには世界に抗う力があるのだろう」

原神wiki 「記録者の箱」より一部抜粋

間違いなくこれはカーンルイアのことだ。
ドラゴンスパインに存在したシャール・フィンドニールが滅んだころ、すでにカーンルイアは存在していたということだ。
意外とカーンルイアは歴史があって息の長い国だったのかもしれない。
だから国外でもカーンルイアが神を頂かない国であることは有名だった可能性もある。

とはいえシャール・フィンドニールが国のかたちを維持していたころは、明確には分かっていない。
何となくThe Arcorn War(魔神戦争)よりも前に滅んでいる気はするので、その頃にもしもカーンルイアを作っていたとすれば、2000年くらい前から存在していた計算になる。
となると、1500年間はカーンルイアが存続したことになり、その間天理の神はカーンルイアを放置していたことになる…

なんだか天理の神の動きが釈然としないんだよな~
もっと早い時点でカーンルイアに対して手を打つほうがより自然だと感じられる。
「寒天の釘」を落としているのが天理の神であるならば、割合頻繁に落としている気配を感じるのでもっと早いタイミングでカーンルイアを滅ぼしにかかるのでは、と思ってしまう。

今現在テイワットで起こっていることに対しても、天理の神は500年間沈黙を貫いているとナヒーダが発言している。
ということは、「天理の神」そのものに何か異常が発生している可能性がかなり高いだろう。目覚めたりできない、場合によってはすでに死んでいて空位になっているか。

脱線してきたのでこの辺にするが、500年前の災厄は天理の神に原因がありそうだなと思う。

アビスはどこから現れたのか

さて、今回のアップデートVer.3.5で追加された魔神任務「カリベルト」では、一体何故アビス教団が生まれたのかが語られた。
大きな謎の一つは「ダーリ」(無神論者)と呼ばれた国の人間が「アビス」という罪人を神と崇めるようになっていることだ。
一体何がそこまで「ダーリ」の人たちや、ヒルチャールの心を掴んだのだろう?

追記:2023/03/07

思えば、この「罪人を救い主と崇める構図」はキリスト教に近い。
(難しいが、イエス・キリストは神ではない。救い主であり、神の子であるから。)

キリスト教の創始者であるナザレのイエスは、当時ユダヤ社会の指導者的地位にあった律法学者から妬まれ(というか疎まれ)、殺害計画を企てられていた。
自らを「ユダヤ人の王である」と名乗ったこと、また「神の子」あるいは「メシア(旧約聖書に書かれていた救い主)」であると自称した罪を彼に被せ、衆議会の裁判にかけられたあと、ローマ総督府に引き渡されゴルゴタの丘で磔刑に処せられている。

カトリック教会でも多くの場合、磔刑のキリストが添えられた十字架が教会の中央に掲げられている。だがその様子はまさにイベントシーンで「罪人」を自称する何かと出会った時の主人公とコロタールたちの構図と一致する。
また、あのイベントがあった遺跡をヒルチャールたちは「五体投地」しながら奥へと進んでいく。五体投地は仏教的な考え方だが、今でもチベットなどではヒルチャールのような巡礼方法で聖地をめぐる人々がいるという。
このあたりもう少しキリスト教や仏教に明るい方が見れば、ピンとくる演出があるかもしれない。

だがとにかく、コロタールはあの聖堂でまるで神から啓示を受けたように錯覚して、アビス教団を設立することに決めた。なんだかイエスの死後、初代法王となって布教に励んだペトロみたいだ。

ヒルチャールたちが崇めるあの謎の力や、「カリベルト」が仮面を外した際あふれ出た瘴気のようなエフェクトは、魔神の業障に似ている。
ということは似た力が根源である可能性は高いはずだ。
しかしそもそも「アビス」の力がどこを経由して現れているものなのか、これもよく分かっていないし、外界の力であるとした場合、なぜその力を持って人々がヒルチャールに変化する必要があるのかなども謎のままだ。

ただあのタイミングで「アビス」の力を持つ「罪人」と遭遇したのは偶然ではなく、意図したものであると感じる。
もともと「罪人」に、コロタール親子、もっと言えば旅人の片割れは目を付けられていたのではないだろうか。

コロタールがアビス教団の設立者となり、旅人の片割れが「姫様」「王子様」となったのは、必然だったのではないだろうか。
そしてこのタイミングで旅人が片割れの記憶を追体験し、「罪人」に捕捉されたことも、見込んでいたように思える。

なんだか事前に決まっている道筋があって、そこにうまくあてはまるように動かされている気がする。行き当たりばったり感はない。
「運命の織機」というのは、こんな風にすでに定まった運命の布(道筋)をすべてほどいて糸にして、織りなおすことで運命を変えるということなのかな。

神に追いすがろうとしたスメールの大賢者たちと、コロタールの姿はちょっと似ている。
結局国が変わろうがなんだろうが、目の前に希望が無くなったとき神に追いすがるのかもしれない。そういう弱みにそれぞれ付け入られたのだろう。

ただ改めて考えてみると、コロタール・アルベリヒが謎の薬を作り、神像に祈っていたのはナヒーダが幽閉されていたころ。
ナヒーダは優しい神であると明言されているので、たとえコロタールが神を信奉しない国の人間だったとしても、彼女が自由にさえなっていれば薬に何らかの影響を与えていたのではと考えてしまう。
もちろん彼女がアビスに対抗する力を持っていればの話だが、そもそもあの薬が効力を発揮しなかったのは、ナヒーダが幽閉されきちんと神としての力を発揮できなかったから、という筋もありえなくないような気がする

結局つまびらかでない時系列に謎が詰まる

結局色々判明しても、謎が謎を呼んでくる。
まだガイアの一族についても明らかではないし、時系列もよく分からない。
全く理解できないことから、少しずつ理解し始めたことも謎が謎を呼び続けている。

ダインスレイヴに関係する一連のストーリーも、念に1回くらいのローペース更新。ちょうど前回の話は第二章・第四幕「淵底に響くレクイエム」で、更新タイミングは2022年3月30日。

これから次の情報がすぐに登場するとは思えないので、多分次回は来年の今頃だろう(先過ぎる…)
ただ半年後には、フォンテーヌ編に突入する可能性もある。
結局またストーリーにかじりつく羽目になりそうなので、油断ならない。
崩壊スターレイルもサービスがスタートするし、マジで手いっぱいだ。
ソシャゲひとつなにか辞めます。

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