「何もしない日あるある」
朝、チュンチュン(正午に鳴く鳥)
まぶたが開くもすぐにフェードアウト。
「あーあ、起きちゃった」
光を感じないように目を何か(タオルとか)で覆って、眠気を呼び戻す。あまり力むと身体が起きちゃうから加減が難しい。暑くても布団をかけて、寒くても布団の中で、じっと籠城を続ける。
二度寝三度寝四度寝に成功しても、トイレか空腹でいつの間にか起き上がっている。
一日が始まることに、さらにそれが昼過ぎに始まることに絶望しながら、その絶望も日常になってると思いながら、足を引きずって生活する。
「何もしない日あるある~そのいち! 何もしない」
お腹はすくけど「なにか食べよう」と思うと胃がキュッとなるから水分で済ませる。まあ数時間後には結局食べるんだけど。
トイレいったあとにまた寝ようとする日も多い。初めは「寝たい寝たい寝よう寝よう」と考えてたら、頭の血管切れた? っていう種類の頭痛がしたから今では億劫になってる。
気づいたかな、ここまで寝てるか生理現象の処理かうだうだ考えることしかしてない。ネットとか見ても集中できないときが結構ある。
座ってるか立ってるか寝っ転がってるかしながら、ぼーっとする。それが今の自分の「人生」であり「生きること」なんだ。
「何もしない日あるある~そのに! 見られてる」
ぼーっとしていると、急に胸が苦しくなる。いや、これじゃ表現しきれてない。
心臓を念力で突かれ、貫かないギリギリで生殺しにされている。
目が大きく開き、息が苦しい。正体はわかってる。ただ、ひとつじゃないんだ。『緊張』『焦り』『不安』その他どれも当てはまる。正確にはそういった負の感覚すべてがこの心臓に牙をむいている。
目は開いてるはずなのに過去の光景と未来の想像が視界に広がる。
何もしていない理由。何もしていない先の将来。
――見ているぞ
やめてよ
――だからお前はそんななんだよ
何も言わないでよ
――そんなんじゃろくな人生にならないぞ
知ってるって
こわいんだよ
あうっ
ゲエエエエエエエエエエエエエエエエロ!!!!!
※吐いてません
あ、あ、でる
オエッ、オウ、ガッ……ゲエエエエエエエエエエエエエエエエエエロゥ!!!!!!!
※吐けてません
最後に吐いたのは受験期だ。そもそも吐くことがすっごい嫌いなんだよね。「終わった」って思わん? 人としての尊厳が失われた気もするし、まるで死を悟ったかのような気分になる。だから延々と吐き気だけが
ウボエエエエエエエエッ、ベエエエエエエッ!!!!
あああああもう! なんでこうなるんだよ! 何もしてないんだよ!?
何もしてなんだから何も起こるなよ! 何もしてないんだから腹減るな! 便出るな! 税金年金保険かかるな!! なんなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
走り出す。そのまま外に出る。ちくしょう。なんでこんな目に。何もしなくてもつらいのかよ。そんなのアリかよ。泣きそうだよ。
吐けない。走る。鼻がじんとするのは涙の合図。でも泣かない。
「なんなんだってんだよおおおおおおおおお」
ブクブクブクブク!!おぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!!!
「あーはははっ! なんだっ、はははっ」
明日、バイトの面接に応募しよう。そう思ったのは今日で何度目かわからない。今すぐ行動しないあたり、覚悟の浅さが伺える。
でも大丈夫。大丈夫にする。見てろよ、笑いたきゃ笑え。だって――
「帰りの電車賃ねえもんな! 稼がなきゃ詰みってもんよ! ガハハ!!」
「何もしてない日あるある~そのさん! 急に元気になる。そんですぐ元に戻る」
一応注意書きをするけど、テンション上がったからって海にバシャンするのはやめような。これジップロック(密閉袋)にスマホ入れて撮影してるだけから。いや、他人の行動を制限したくはないからダメとは言わん。でも自己責任でね。溺れてヘリ呼ばれでもしたらまた立ち直れなくなるでしょ、申し訳なさでさ。そんじゃまた。