靴を買った話。

半年ぶりだろうか、新しい靴を買った。普段履きのコがくたびれてきて、暇を出すことにしたのだ。向かった先はショッピングモール内の量販店。セレクトショップよりも気軽に入れるショップへ足を運び、相棒選びを始めた。できれば長時間履いていても痛くならなず、疲れにくいものがいい。思案を巡らせながら、ひと通りの商品を確認して、やはり専門家に相談しようと店員さんに声を掛けた。
 「すみません、街中を歩き回っても疲れにくい靴のオススメはありますか?」
 「疲れにくい靴ですか、ご予算は……なるほど。それでしたら、今私が履いているこの靴がオススメです。底減りが少なくてソールが厚いので疲れにくいですよ。靴ひもが無いのもラクですし」
 「へぇ、モックシューズ、ほとんど履いた事ないです。オフィスカジュアルな服装に合わせも違和感ないですか?」
 「落ち着きというよりアクティブな印象になりますけど、暗めのカラーなら合わせやすいと思います」
 「なるほど。こういう選択肢もあるんですね。よく雑誌で見かける、有名ブランドのスニーカーってどうですか?」
 「ん〜、正直オススメはしません。息の長い人気のアイテムではありますね。別ブランドで似たモデルの靴が店頭にありますが、オススメはワンランク上のものになるんです」
 「ふむふむ」
 「他に選ぶなら、初期コストは高めですが、レザーブーツはアリですね。ソールもですが、全体的に造りがしっかりしているので」
 「親切にありがとうございます。流石、靴の事にとても詳しいですね」
 「恐れ入ります」

という風なやり取りを経て、私はモックシューズの購入を決めた。シューレースのない靴を履き慣れていないため、サイズ確認を含めて3度も試着させてもらった。そんな煮え切らない私にも、笑顔で気長に付き合ってくれた店員さんのお陰で、楽しい買い物になった。この先玄関で下ろしたての靴を履く度に、この時のことを思い出しては嬉しい気持ちになるだろう。《モノより思い出》なんてキャッチコピーがあったけれど、私はどちらも素敵なものにしたいなと思う。

わたしが書いた読書感想文に添えられたコメントがトラウマになったまま。国語教師の『良い本を読みましたね』という文章力について完全スルーの評価を下されたあの日、わたしは『書くこと』を諦めた。誰かに伝わらない文字の羅列に意味なんてない。